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あなたの理想

「あれがエリーのゴクギよ!」

 カノンが嬉しそうに解説してくれる。

「凄いな。たった一週間で極義に至れるなんて」

 僕が驚いていると、戦況は大きく動く。

 これまでムラクは炎の斬撃でエリーを攻撃していた。エリーはそれに対して氷の壁を造ってやっと思いで防いでいるという感じだった。

 でも今では炎の斬撃はエリーに到達する前に凍って消える。

 エリーはただゆっくりムラクに近づくだけだ。それだけだがムラクの身体は凍りついていく。

「ど、どうなってんだ!」

 ムラクは動揺しているようだ。

「エリーのゴクギは自らの体内温度を下げるというもの。使い過ぎは命にかかわるから危険だけど、短期決戦なら無敵よ。近づいたらもの全てを凍らせるんだからね」

 カノンの言う通りエリーに近づかれたムラクは徐々に凍っていく。エリーの身体からは冷気が出ており、生きている感じが全くしなかった。

 ムラクは遂に凍りついた。A級冒険者にしてはあっけない最後だった。

 審判たちが凍えながらやってきて、二、三回頷くと、司会に合図を送る。

「勝者エリー——」

 司会が声高らかに勝者を宣言しようとした、そのとき……、

「……待てよ」

 その声は凍ったムラクから聞こえた。バリバリとムラクを覆う氷にひびが入り壊れさる。

「ちょっとはやるじゃねェの。ゴクギィ!」

 ムラクの鎌の刃に紫の炎が宿る。ムラクは鎌を振り回し、紫の炎の斬撃を放つ。斬撃は先ほどのように凍ることなくエリーの身体を切り刻んだ。

「これが俺のゴクギ! 死にそうになったとき俺の炎は紫に成る。火力も跳ね上がる。俺の勝ちだ」

 膝をつくエリーにムラクは更なる斬撃を浴びせる。エリーはそれらの攻撃をくらい、倒れてしまう。

「エリー!」

 僕は叫んだ。

 するとエリーの身体がピクリと動いた。

「あの、人が言ってた。髪は長くて白い、触れたら消えてしまいそうなぐらい綺麗な人が好きだって」

 ぼそぼそ言いながらエリーが立ち上がる。

「あなたの理想は負けない!」

「うっせェ死ね」

 ムラクはエリーに再び紫の斬撃を放つ。エリーのスキルではムラクの炎は止められない、かに思えたが、斬撃は凍りついた。

「なにィ!」

 ムラクも驚きを隠せないようだ。エリーはこの土壇場でもう一度段階進化した。

「ち。アレしかねェな」

 ムラクは鎌を振り上げ、紫の斬撃を受けに飛ばした。その間にもエリーが彼に歩み寄る。

 だが突然エリーの髪が黒に戻った。身体からわずかに出ていた冷気も消えている。

 ゴクギが解けたのだ。

「死ね!」

 そんなエリーにムラクは容赦なく斬撃を浴びせる。斬撃はエリーの身体を貫いた。

「どうなってるの!」

 僕の隣でカノンが騒ぎ出す。

「きっと会場にいるムラクの協力者がエリーにスキルを無効化したんだ。さっき真上に斬撃を放ったでしょ? あれが合図だったんだ。僕は一度バフをかけたことがある人間の状態を見れる。エリーには今スキル無効状態が付与されてる……」

「そんなのズルじゃん」

「……そうだよ」

 でもバビロンをズルして助けようとした僕にはなにも言えない……

 ムラクは斬撃をくらって倒れたエリーの身体を鎌で刺す。

 これ以上エリーが戦うのは無理だと判断したのだろう、戦いの結果を叫ぼうと審判が口を開く。

「おいテメエ」

 ムラクが審判を睨む。

「まだ止めんじゃねェぞ!」

 ムラクの全身から溢れ出る殺意。僕は戦慄していた。人間にこれほどまでの殺意が出せるのか。

 審判も恐怖で固まって黙りこんでしまう。

「さてここからは戦いじゃねェ。一方的な蹂躙だ」

 エリーをさしている鎌の刃が紫に変色する。

「ぎゃあああああああ!」

 エリーが叫び声を上げた。観客もドン引きだ。恐らく刃を紫の炎で刃を熱しているんだ。

「……!」

 気づいたら僕の身体は動いていた。通路を抜け会場に飛び出し僕はムラクを殴り飛ばす。自らの意思で。


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