不穏
「ムラクさん。あなたエリーのスキルを第三者の力を使って消しましたね」
僕の言葉に観客がどよめく。
「はぁ? 何言ってんの? 証拠は?」
ムラクは首を傾げてとぼける。
「僕のスキルは対象にバフをかけること。そして、一度バフをかけた相手の状態が見える。今の戦い、あなたが紫の炎を上に飛ばしてから突然エリーにスキル無効状態が付与されました。つまり、紫の炎を上に飛ばすことが観客席のどこかにいるあなたの仲間にあなたが送った合図で、仲間は指示通りにエリーのスキルを消した」
僕はこれから言わなくてはならない。全てを正直に。
「……正直に言います。僕もこの戦いで不正をしようとしてしまいました。だから僕にあなたをとがめる権利はない。でも仲間を必要以上に傷つけることは許さない」
「何カッコつけちゃってんの?」
ムラクは僕を鼻で笑う。
「だいたい、証拠はあるのかよ」
「だから僕は一度バフをかけた相手に……」
「違う。お前が本当にバフをかけた相手の状態が見れるのかっつー証拠だ」
「それは……」
ない。見れるから見れるという、この場では不利にしかならない説明しかできない。
「ま、お前が言っていることが全部正しいという可能性もある。……そこでだ、審判。いるんだろ? こういうトラブルになったとき白黒つけられるスキル持ちが」
審判は頷いてある少女を連れ来る。それは僕が良く知る人物だった。ムテキを連れ去った男と共に激闘を演じたサリーだ。
「サリー! 何でここに?」
「私のスキルがこういうとき役に立つから招集されたの」
そうなんだ。でもサリーが見ればはっきりする。これでムラクの不正が暴けるぞ。だがスキルでエリーを見たサリーが放った言葉は僕が予想に反したものだった。
「エリーにウロナが言うような状態はないよ」
え? そんなはずは……
僕は慌ててエリーの状態を確認する。だがさっきまで確かに付与されていたスキル無効状態はなくなっていた。
やられた。僕と話している間に、ムラクの仲間がエリーからスキル無効状態を取り消したんだ。
「俺に負けてほしかったんだろ? 気持ちは分かるよ。次のお前の相手がアイアン・コールマン、S級に最も近いって呼ばれてる男だからな。でも噓はいけねェぜ。それと俺に不正を認めさせるために、不正しようとしたことを話したんだろうが——」
ムラクは僕の肩に手を置いて……
「逆効果だったみたいだぜ」
「不正しようとしたってどういうことだ!」
その怒声は観客席から聞こえた 僕が声のほうを見ると観客の一人が楽しみを邪魔されたみたいに僕を睨んでいるのが見えた。他にも僕を睨む観客は何人もいる。
この人たちにとって対抗戦は年に一度の楽しみなんだ。不正をはたらこうとした僕に不満をぶつけるのは当然だ。
「ウロナ・ポーン様。少しお話が」
僕は審判たちに腕を掴まれて、どこかへ連れていかれてしまう。




