ゴクギ
「どうしてここに?」
カンバラは責めるように言う。
「カンバラさんが心配で来ちゃいました。私」
子供は悪びれない笑顔を見せる。
カンバラは無言で子供を抱え上げると、来た道を戻り森の外を出る。かなり危険な依頼だからな。あの子を巻き込みたくないんだろう。
そう思ったが森を出たカンバラはすぐに少女を抱えたまま森に入ってきた。カンバラは驚いたように森の出口を見ると再び、そこに向かう。だがまた子供を抱えたまま入ってきた。
「何してるんですか?」
カンバラの意味不明な行動にエリーがつっこむ。
「閉じ込められました。森の外から出られません。恐らく卵から生まれた魔物の影響でしょう……」
マジか! じゃあ魔討伐するまで出れないってこと?
僕の驚きをよそにカンバラは子供の頬を叩く。子供は頬を抑えると泣き出してしまった。
「ちょっとカンバラさん!」
カノンがカンバラから守るように子供を抱きかかえる。
「私はあれだけ来るなと言ったのに! 私だって君のことが心配なんですよ……」
カンバラは力なく言った。そうか。この人は本当にこの子のことが大切なんだな。
「行きましょう。こうなったら早急に魔物を討伐します」
眼鏡をかけ直してそう意気込むカンバラだったが、結局この日目的の魔物を見つけることはできなかった。
すっかり日が暮れ、視界の悪くなった森でこれ以上の捜索は危険ということになり、野宿することになった。
カンバラは筒のようなものを置く。すると筒から青色の膜のようなものが出て、そのまま上にのび、更には横に広がって、膜は四角形をつくった。
これは今みたいに危険な場所で野宿するときのアイテム、簡易結界だ。魔物の襲撃から僕たちを守ってくれる。
カンバラはまだ子供のことを怒っているようで一切口を開かない。ちなみに子供の名前はサリーだ。
「そういえばサリー、君はどんなスキルを持ってるの?」
サリーもカンバラに怒られて落ち込んでいたので、元気づけようと話を振ってみた。
「観察。私が見た人の弱点とかを見抜ける。あとゴクギで見た人のステータス値が分かるよ」
ゴクギとは簡単に言うとスキルの天井だ。ゴクギに覚醒するにはなんらかのきっかけが必要。ちなみに僕はまだ未覚醒だ。
「じゃあ、カンバラさんのステータス値分かる?」
「うん」
サリーはカンバラのほうを見る。彼女の瞳が緑色に輝く。
「9632。ウロナの約五倍だね」
スゲー! たしかに僕の五倍だ! でも何で……、
「僕のステータス知ってんの?」
「さっきこっそり見た。カノンが7357。エリーが6987。ウロナのバフの力でしょ?」
そう、僕のバフでカノンとエリーはA級冒険者レベルのステータス値になっている。まあ、武力しか上がってないんだけど。
ただ一つ疑問がある。僕は自分が上げたステータスの量が分かる。だから昨日からずっと疑問だった。
カノンとエリーのバフが3000しか上がらないのだ。それでも十分なのだがバビロンたちには10000のバフがかかった。一体何が違うんだろう?
「それにしても素で9000以上は凄いな。カンバラさんA級でも強いほうなんだ」
「そんなことはありませんよ」
僕の台詞を聞いていたのか、カンバラがそう言う。
「ステータス値6000を超える冒険者がなかなか出てこないだけでA級では9000で最低レベルですよ」




