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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第四章:「見習い騎士は気象学者!?」
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第22話 ある新米騎士の一日

第04節 新米騎士〔4/6〕

 朝。最も早く起きるのは、俺かシンディのどちらかである。


 シンディは、起きてすぐ工房に火を入れる。今作っているのは、神聖鉄(ヒヒイロカネ)の大太刀。リック義父(おやじ)に贈ると約束したものである。ちなみに、刀身四尺八寸(145.44cm(センチ))、実用性皆無のモノとする予定。

 これを打つ前は、シンディ用の懐剣を打った。シンディ以外の全員がヒヒイロカネ製の武具を持っているのに、シンディだけは持っていないからだ。とはいえ下手に攻撃力がある武具を持たせると危険だから、最低限の護身の為の懐剣にしたのである。

 勿論(もちろん)、それらと並行して生活用刃物も打っている。何故かシンディに甘いリリスが、シンディが必要と思ったら俺を連れて『ベスタ大迷宮』や『鬼の迷宮』に転移して、必要鉱石を採掘する。おかげで今は、各種神聖金属の(ほか)各種非魔法金属類(宝石の原石を含む)が俺の〔無限(インベン)収納(トリー)〕に豊富にストックされている。たとえば、『ベスタ大迷宮』探索時に採掘した白金(プラチナ)は、シンディの金床(かなどこ)を作る為にほぼ全て消費したが、リリスに連れられての採掘で金床3つ分くらいの量を確保出来た。

 ちなみに、俺が使用する生活用刃物(薪割(まきわ)り用の手斧(ちょうな)など)は、ヒヒイロカネ製ではなく普通の鉄製。ヒヒイロカネ製だと斬れ味が良過ぎて俺のトレーニングにならないから。


 俺は、起きてから市中をランニングした後、太刀『八咫(やた)』を鞘に入れたまま素振(すぶ)りをする。下手な鉄棒を振り回すより、俺にとっては良いトレーニングになる。

 素振りの後は、薪割りだ。これもまた、トレーニングを兼ねる。


 俺がランニングから帰ってくる頃には、シェイラが起きている。

 寮の庭で飼っている家禽(かきん)(にわとり)(かも))と馬たちの世話をし、卵を取り、朝食を作る。


 パンとベーコンの良い匂いがする頃、ようやくリリスが起きてくる。

 そして当たり前のように誰よりも先に食卓に着き、皆を待つ。


◇◆◇ ◆◇◆


 朝食が終わると、それぞれの一日が始まる。

 シェイラは冒険者ギルドを(おとず)依頼(クエスト)を探し、シンディはまた工房に(こも)る。

 リリスはどうやってか俺の〔無限収納〕から入間氏のノートPCを引っ張り出し、ゲームに夢中(最近は戦略シミュレーションに()まっているようだ)。

 俺は、騎士舎に。


 騎士舎では、他の騎士たちと混じって訓練を行う。

 ところで、叙任(じょにん)式で聖別された騎士剣は、冒険者風に言うと片手半(バスタード・)(ソード)に該当する。但しその使い方は、騎乗して片手剣として、徒歩(かち)で両手剣として、という具合だ。楯と併用するのは、騎乗時。

 その為、騎馬術、騎馬剣術、騎馬槍術、騎馬弓術(流鏑馬(やぶさめ))、両手剣術、などを身に付ける必要がある。

 俺も普通に馬に乗れるが、全速力で走らせ障害を越えるとか、馬に乗りながら片手に剣片手に楯を持って打ち合うとか、騎兵突撃とか、そんなことはここに来るまでしたことが無かった。弓術に至っては、(いしゆみ)に頼って全然使っていなかったから、一から学ぶ必要があった。

 両手剣術も刀術(日本剣術)とは違う。

 馬術も剣術も、俺はまだまだ劣等生。対して俺の上官であるローズヴェルト卿の剣術は(すご)い。俺より二つか三つ年上なだけなのに、女性の身でありながら他の歴戦の騎士たちの(ほとん)どを圧倒する。ただ自信過剰のきらいがあり、それが先のブルックリンの戦いに於ける敵中孤立に(つな)がったともいえる。ちなみに、彼女に対して俺が(ひそ)かに付けた渾名(あだな)は「くっころさん」。


◇◆◇ ◆◇◆


 午後は基本的に自由時間。

 だが俺の場合、大抵は礼法やら座学やらが入れられる。

 座学に関しては読み書き算術程度は全く問題にならないし、歴史も(特にカナン帝国期については)下手したら教師より詳しいという自信がある。が、流石にフェルマール王国貴族の個人史だの、勢力分布だの、各領地の特産品だのまではよく知らない。

 そしてダンス。論功(ろんこう)行賞(こうしょう)後の夜会(パーティー)のダンスは、俺は及第(きゅうだい)点だと思っていたが、王女様にとっては不十分だったらしく、更なるスキルアップを求められている。


 その他、ルシル王女とローズヴェルト卿を相手にお茶会をすることを強要されたりしている。そして俺の冒険者時代(まだ現役だが)の逸話(いつわ)を聞きたがる。


 こう書くと、まるでルシル王女が俺に気があるように思えるが、多分違う。

 王女は疑っている。あの〔酷寒(コキュー)地獄(トス)〕に、俺が関与していることを。だから、俺が口を(すべ)らすのを待っていると同時に、真実に至るヒントを探しているのだ。


◇◆◇ ◆◇◆


 夕方になると、俺は自分の寮に戻る。

 そしてシェイラが()み俺が〔加熱(ヒーティング)〕で()かした風呂に入って一日の汗を流す。風呂は男女別だの時間別だのということはない。初めはちゃんとルールを、と考えたのだが、すぐに無駄だと思い知った。

 シェイラは俺に対しては羞恥(しゅうち)心を持たない。(いや)、最近は年頃の乙女らしく恥ずかしいと感じるようになったようだが、どうも「一緒にお風呂」を嬉しいと感じる気持ちの方が強いらしい。

 シンディは、俺のお(めかけ)さん志望を公言しているから、たとえ禁止しても俺の入っている風呂に全裸突撃しでかす。(すき)あらば襲い掛かろうと肉食獣の眼差(まなざ)しで狙っているのだ。だから混浴禁止を解除する代わり、夜這(よば)いは禁止とした。でないと(俺の)寝室に鍵を付けるぞと(おど)し(?)て。

 リリスは抑々(そもそも)人間の羞恥心を理解していない。だが、入間氏のPC内のデータとシンディの所業(しょぎょう)所為(せい)で、人間の性行為に興味を持ちつつある模様。本気で興味を持った時、どういう行動に出るか多少不安だ。


 風呂から出たら、家族全員で食事をする。

 食事は可能な限り全員で、がうちのルールなのだ。その時の会話は、一日で一番楽しいと思える。シェイラがその日に請けたクエストの裏話をし、シンディが作業の進捗(しんちょく)を話し、リリスが入間氏のPC内データについて質問する。俺も、訓練のこととか王女との会話についてとか、話すことがたくさんある。


 食後は軽く身体を動かし、またリリスが無駄に消費したバッテリーの充電作業を行い、就寝。朝が早い分、夜も早く床に()くのだ。そして探索行の最中(さいちゅう)は眠るというのも一つの作業になっていたからこそ、安心して寝れるというこの環境を皆大切にする。


◇◆◇ ◆◇◆


 そんなある日。


「セレストグロウン卿。私は(けい)に、決闘を申し込む!」


 ……誰?

(2,836文字:2015/12/15初稿 2016/09/30投稿予約 2016/11/04 03:00掲載予定)

【注:「くっころさん」については、第二章第35話のあとがきを参照してください】

・ 騎士寮は独身寮と家族寮があり、家族寮は所謂戸建てです。アレクたちは家族寮に入っています。ちなみに独身寮はアパート型で、寮母さんが炊事や洗濯などをしてくれます。

・ 剣の区分について、厳密には、「小剣」は歩兵の剣、「長剣」は騎兵の剣、「片手半剣」は騎歩どちらでも使用出来る剣を指します(長さではなく兵科で区分します)。が、冒険者たちに騎兵はいません(探索に馬は使えない)ので、だいたいの長さで区分されます。また「ブロードソード」「シミター」「レイピア」のように形状で区分される場合もあります。

・ 入浴中は意識がありますから、欲望に理性で対抗出来ます。が、睡眠中は意識がありませんから、抵抗出来ません。だから混浴は良くても夜這いは駄目なのです。おかげでシェイラも、アレクと一緒に寝れません。それに、お布団の中では、男の子は女の子には見せられない自主鍛錬をしなければなりませんし、ねぇ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本刀で素振りをすると、目釘が傷んて柄がガタついたり実戦時にスッポ抜ける可能性があるので、体力トレーニングなら重さと重心位置を同じくした鉄の棒のが良いかと… まぁ、専属鍛冶師も居るし、こま…
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