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56歳孤独な男の独白  作者: 無能で孤独な男
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7/13

変わった生徒

 初日の仕事を終えた私は、帰りにスーパーへ寄った。


弁当売り場には、まだ半額のシールが貼られていなかった。


二割引きの唐揚げ弁当を手に取り、しばらく悩んだ。


半額になるまで待てば、百五十円ほど安くなる。


だが、今日は早く家へ帰りたかった。


私は唐揚げ弁当とカップラーメンを一つずつ買った。


帰宅すると、制服を脱いで床に置き、電子レンジへ弁当を入れた。


温めを待つ間も、頭に浮かんでいたのは学校のことだった。


覚悟していたより、初日は平穏だった。


怒鳴られなかった。


失敗もしなかった。


生徒たちに絡まれることもなかった。


それだけで十分なはずだった。


それでも、気持ちは落ち着かなかった。


校門の前に座り込み、教師へ悪態をついていた男子生徒。


授業中なのに廊下を歩き回っていた生徒たち。


トイレの壁に書かれた落書き。


割れた窓ガラス。


廊下の向こうから笑い声が聞こえるたび、私は自分が学生だった頃のことを思い出した。


電子レンジが鳴った。


私は弁当を取り出し、テレビの前に座った。


唐揚げを一つ、口へ入れた。


食べている間だけは、余計なことを考えずに済む。


そう思っていた。


だが、その日に見た光景は、なかなか頭から消えてくれなかった。


不良ばかりが気になったわけではない。


あの学校には、ほかにも変わった生徒がいた。


午前中、私は図書室の前の廊下を掃除していた。


授業中だったため、図書室には誰もいないと思っていた。


しかし、開いた扉の向こうに、一人だけ生徒が座っていた。


女子生徒だった。


制服を着ていたので、それは分かった。


だが、彼女はなぜか、バイク用のヘルメットをかぶっていた。


黒いフルフェイスヘルメットだった。


校舎の中でも脱がず、そのまま机に向かっていた。


最初は眠っているのかと思った。


だが、よく見ると、机の上には何冊もの参考書が積まれていた。


彼女はノートへ何かを書き、参考書をめくり、またノートへ書き込んでいた。


周囲に教師はいなかった。


一人きりで、黙々と勉強していた。


その姿は、あの高校の中では明らかに浮いていた。


私は目を合わせないように、すぐ廊下の掃除へ戻った。


ヘルメットをかぶっていた理由は分からない。


顔を見られたくなかったのか。


校則へ反抗していたのか。


それとも、ただ変わった生徒だったのか。


私には関係のないことだ。


私は教師ではない。


生徒の事情を知る必要もない。


決められた場所を掃除し、問題を起こさずに帰ればいい。


そう考えながら、私は二つ目の唐揚げを口へ運んだ。

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