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生成魔術師の処方箋  作者: 夕綾るか
第一章

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第十話 転生者と猫の旅立ち


 夜が明けないうちに、私はルークと一緒にラスウェル伯爵家のタウンハウスを出た。

 卒業を間近に控え、ある程度、部屋の整理をしていたこともあり、すぐに発つことができた。

 まあ、元々大切なものは収納魔法でしまっていたから、大したものを置いてはいなかったし。ここを離れる時期が少し早まり、行き先も少し変わってしまったけれど。


「ねえ、ルーク。さすがに歩いて行くのは難しいと思うのよ」


 私を先導するように前を歩くルークが私の言葉に反応しピタリと足を止め、私の顔を見上げると、小さく「にゃあ」と鳴いた。


(ルークって……やっぱり言葉を理解している?)


 初めて会った時から何となく感じていた。いくら飼い猫だったとしても、意思の疎通ができすぎている気がする。

 私はその場にしゃがむと、ルークの瞳を見つめた。今までも月明かりでしか見ていなかったが、改めてじっくり見ると夜空のように濃紺で縁が金色に輝いている。


「ルーク……?」


(この瞳……どこかで――)


 私と視線を交わしていたルークは小さく首を傾けると、ひらりと体勢を変え、歩き出した。


「ちょっ……ちょっと待って、ルーク!」


 スタスタと先を歩き進めるルークを呼ぶも、止まる気配はない。

 私はルークを見失わないよう歩みを速めながら詠唱した。


「《抽出》」


 私が魔法を口にした瞬間、前を進むルークが勢い良く振り返った。それと同時に私の手の中に魔法具が現れる。

 いつでも使えるように“収納”しておいた転移装置。学園で授業中に使ったものを一度、“収納”し、“複製”しておいたものだ。

 学園は私にとって、宝の山だった。

 それなりに権威のある教授たちの様々な魔法を“収納”することができ、それを生成して自分の魔法に変えることができた。授業で使用した魔法具や薬の類も同様で、これからの生活に全く困らないくらい“収納”してある。


 伯爵家のタウンハウスにあるものも、必要だと思われるものや気に入ったものはすべて“収納”してある。

 もちろん、母の執務室にあった家具や調度品、愛用していたものも。それに思い入れのあるのものは原物を“収納”して、“複製”に入れ替えておいた。だから、父が捨ててしまったであろう母の遺品はすべて複製品だ。誰一人、気づくわけないけれど。


 そんな経緯で私の掌には今、転移のできる魔法具が載っている。生きている馬は“収納”できないし。でも、移動手段は必要だから。

 転移魔法も“収納”はしてあるが、今、魔法の痕跡を残すわけにはいかない。転移魔法には膨大な魔力を伴うから、魔力の強い人間には気づかれてしまう。その点、転移装置であれば、そこまで遠くには行けないが、普段よく使われているから、目立たない。

 まずは一番近い街まで転移して、今夜は宿に泊まることにしよう。


「ルーク、おいで」


 ルークは私の掌にあるものを把握しているかのように、私の腕の中に飛び込んできた。


「行くよ、《起動、転移、王都の街プルティウス》」


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