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濡れ衣で地に堕ちた補助魔術師、実は最強の討伐者で伝説になりました。〜組織の闇を知りすぎて消された俺は、新たな仲間と立ち上がる〜  作者: イソザキ・アラタ
第一章『追放』

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第8話 たった一撃で?

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 やがて、リヴァージュの北門が見えてきた。そこには、俺たちが出ていった時と同じ、二人の衛兵が立っていた。彼らの隣には、小太りで眼鏡をかけた、いかにも役人といった風体の男が一人、腕を組んで立っている。おそらく、都市から派遣された鑑定士だろう。


 俺たちの姿に気づく前、彼らの下卑た会話が、風に乗って俺の耳に届いた。


「……だから言ったでしょう。Cランクパーティーの定期監視報告なんて、時間の無駄なんですよ。どうせゴブリンを二、三匹倒したとか、そんな下らない報告に、いちいち私を呼びつけないでいただきたい」


 鑑定士が鼻をすすりながら、ぼやいている。


「へへっ、まあ、そう言わねえでくださいよ。あの暁の太陽には、例のロゼットが仲間入りしたって話じゃねえですか。見世物みたいなもんですよ」


 衛兵の一人が、楽しそうに答える。


「ああ、あの男か。英雄から地に堕ちた哀れな補助魔術師。今度は女ばかりの弱小パーティーで威張り散らかすとは、どこまで性根が腐っているんだか」


「違いないですよ、シグルドさんの慈悲がなけりゃ、今頃は牢屋の中だっていうのによ」


 俺は、静かに歩を速めた。俺の悪口は、もう聞き飽きた。だが仲間になったばかりの暁の太陽を、その仲間たちを侮辱されるのは、我慢ならなかった。


 俺が担ぐ巨大なオークの影が、彼らの足元に落ちた時、ようやく三人は俺たちの存在に気づいた。そして次の瞬間、彼らの顔から、血の気が引いた。下品な雑談は、ぴたりと止んだ。


「ば、馬鹿な……な、なんだ、そのオークは!?」


 衛兵の一人が、震える指でオークの死体を指さす。鑑定士も、自慢げな態度はどこへやら、眼鏡の奥の目をカッと見開き、あんぐりと口を開けている。


「ありえん……これは、オーク・ウォークライアー、Aランク相当の希少種だぞ。何故こんなものが、北の森の浅層部に!?」


 俺は無言でオークの死体を、わざと音を立てながら、彼らの目の前の地面に降ろした。地響きが、彼らの驚愕をさらに煽る。


「依頼通り、北の森の監視を完了した。暁の太陽所属、ロゼット・バークフェルドだ。これが、その道中で討伐したモンスターです。鑑定を頼みます」


 俺が淡々と告げると、鑑定士は慌てて我に返り、専門家の顔つきで死体を調べ始めた。だが、その手は微かに震えている。


「この傷、喉元の、この一撃が致命傷か……しかし、武器は?」


 彼の視線が、ミーナから借りて腰に差していたショートソードに向けられる。


「……まさか、こんな小さな剣で、この化け物を……馬鹿な、集団で嬲り殺しにしたとしか、いや、しかし傷はほとんどない……まさか、お前たちだけでこれを?」


 鑑定士の目は、完全に俺たちを疑っていた。弱小パーティーが、こんな大物を狩れるはずがない。何か不正を働いたに違いない、と。その疑念に満ちた視線は、昨日の俺なら、心を深く傷つけていただろう。


 しかし、今の俺の心は不思議なほど晴れやかだった。


 そうだ、疑うがいい。だが、目の前にあるこの巨大な討伐の証拠は、紛れもない事実だ。お前たちがどれだけ俺たちを侮辱し、見下そうと、この事実をねじ曲げることはできない。


 そして、役人であるお前は、この事実を、偽りなく都市に報告する義務がある。お前たちは、その気に食わない舌で、俺たちを賞賛しなければならないのだ。


 鑑定士は、十分ほどかけて死体を隅々まで調べたが、不正の証拠など出てくるはずもなかった。彼は、苦虫を百匹も噛み潰したような顔で、渋々と鑑定結果を書類に書き込み始めた。


「討伐を確認した。希少種オーク・ウォークライアー、一体。討伐者は、暁の太陽……特筆すべき功績として、上に報告しておく」


 その声は、悔しさに震えていた。隣の衛兵たちも、顔を真っ赤にしたり、青くしたりしながら、絞り出すように言った。


「……ご、ご苦労でした。り、リヴァージュの平和を守る、見事な働きです……」


 その、心にもない賞賛の言葉を聞きながらも俺は、これが奴らの不正を暴くための、長い戦いの第一歩なのだと確信した。


 アジトに戻ると、玄関先にはミーナの姿があった。


「すごい、すごいよ、ロゼットさん! ラークスちゃんも、リーゼも、まさか、あんな大物を討伐してくるなんて!」


 ミーナは、既にギルド経由で報告を受け取っていたようだ。黄金の五芒星にいる時はほぼ利用しなかったが、討伐パーティーや冒険者の集うギルドという集会場が近くにある。ミーナはどうやら、そこで既に報告を受けていたみたいだ。


 彼女の純粋な喜びように、リーゼもラークスも、照れたように頬を染めている。その光景に、俺の心も少しだけ温かくなった。


 だが、その温かい空気が家に入った瞬間に、ぴんと張り詰めたものに変わった。


 そこには、先客がいた。テーブルの椅子に、一人の女性が、静かに座っていたのだった。


 20歳くらいだろうか。彼女は冒険者が着るような革鎧ではなく、リヴァージュの街でよく見かける、質素な灰色のワンピースを着ている。その姿は、一見するとどこにでもいる街の娘のようだ。


 だが、背筋を伸ばしたその佇まいや、テーブルの上に置かれた、指の節目が硬くなった手は、彼女がただ者ではないことを物語っていた。窓からの逆光で表情はよく見えない。だが、部屋全体が、彼女が発する重い沈黙に支配されているようだった。


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