第25話 地上近くのバザー
夢野真穂(魔法少女プルシェリア)
クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」
HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい
佐伯瑠
クラス:狩人 +レッドホーク357マグナム
HP:高め、MP:低い、STR:高め、VIT:高い、DEX:凄腕、INT:低め、AGT:素早い
目が覚めた後、軽く朝食を取ってから部屋の片づけをして、ちゃんと酒瓶を土に戻して出立。
どうやら本当に地上が近いらしい。これまではモンスターにしか出会わなかったのに、ポツポツとではあるけど他の冒険者一行とすれ違うようになってきた。
冒険者といっても、その人数はまちまち。私たちのように二人で少数精鋭というパーティもあれば、ぞろぞろと六人くらいで組んでいる人たちももいる。佐伯さんの話によると多いパーティだと十二人とかいう、本気で最深部を攻略しようという部隊もいるのだとか。
「ねえ、佐伯さん。地上ってどんな風になっているんですか?」
「ん? ちょっとした町だよ。冒険者用の宿泊所があって、冒険者用の酒場があって、武器屋に防具屋、食堂、魔石屋、市場に服屋。必要と思われる施設は一通りそろってる感じかな」
「へえ。それだけあるって事は結構栄えているんですね」
「まあ、ダンジョンってある種の産業だからなあ。産業が興れば、その周辺って嫌でも発展するものだと思うよ」
ダンジョンが見つかる。
そこに潜ってお宝を探し出そうという輩が現れる。
そいつらが快適に作業ができるように、支援する店が近くにできる。
そのお店で働く人たちのための生活施設ができる。
その生活施設で使用する物資を生産する人たちが現れる。
生産者から生活施設へ物資を届ける物流業者が必要となる。
揉め事を解決する治安維持部隊が必要となる。
それを統括する事務員や政治家が必要になる。
そういった人たちを癒す、性サービス業が現れる。
そういった感じで集落というのはどんどん大きくなっていくものなのだとか。
……というか、どう考えても最後の性サービスのくだりはいらないでしょ。佐伯さんのアホ。
もしかしたら今日中に外に出れるのかも。そう考えると自然と足が軽くなる。
丸々半日歩いたところで、またも大広間のようなところに出た。ただ、前回とは全然雰囲気が違う。広間というよりは拠点。行商人があちこちで呉座を敷いて座っている。
「うわっ! 何ですかここ! もしかしてここがダンジョンの入口だったりします?」
「残念だけど入口じゃないよ。ここは入口から大体半日くらいのところにある広間なんだよ」
周囲を見渡すと、明らかにこれからダンジョンの奥に向かおうという感じのパーティと、色々とあったのであろう傷だらけのパーティが滞在している。呑気に一杯やってるパーティまで。
「どこのパーティにもさ、おっちょこちょいな奴ってのはいるもんなのよ。でも半日かけてここに来てるじゃん。もう戻るわけにもいかないのさ。で、忘れ物をここで買ってくってわけよ。もちろん地上より高値でね」
「うわあ。何と言うか、狡すからい商売してるんですね。でもそれで成り立つって事は結構需要があるって事ですよね」
「だね。六人パーティとかでさ、忘れ物したから俺ちょっと戻って取ってきますってなわけにはいかないもんな。だって、ここまで来ちゃうと往復で二日かかるわけだから」
誰が最初に考えたのか知らないけど、商才のある人ってのはいるもんなんだね。そういうのがパッと閃いて実行に移せるって羨ましい。
「真穂ちゃん。俺ちょっとそこの受付に用があるから、その辺ぶらぶらしててよ。あ、ちなみに今日はここで宿泊だからね」
「あの、私も付いて行っても良いですか? 後学のために」
「まあ、良いけど。来たって何も面白い場所じゃないよ」
入口、というか出口というか、私たちが入ってきた所から、向かって左側は宿泊区画らしく、所狭しとテントが並べられている。大きいのから小さいのまで。向かって右手にずらりとバザーのように商店が並んでおり、その奥の一区画に机を置いて座っているだけの人がいる。ぱっと見では何かの受付のような場所。そこに向かって佐伯さんは歩いて行った。
「どうぞ、お座りください。今日はどのような申請ですか?」
「えっと俺、佐伯って言います。以前、行方不明者の申請をしたのですけど」
「少々お待ちください」
机の向こうに座っている男性が何やら紐で綴られた書類の束をボンと机に置いた。
「名前は牧原奏、戦士、女性です」
「マキハラ、マキハラ、ああ、はいはい。捜索中になってますね。では、見つかったのですか?」
「ええ。スケルトンになって徘徊してました」
その報告自体、結構キツイ話だと思うのに、この男性、眉一つ動かさずに書類に何やら書き込んでいった。
「で、どうなさいますか? 浄化依頼を出しますか?」
「えっと、蘇生は……」
「蘇生となるとかなり高レベルの聖職者に依頼する事になりますので、相当な額のお布施が必要となりますが、かまいませんか?」
「あ、いや、結構です。そこは俺が自分でやりますので。鎧とか、武器とか、もし回収される事があったら、保管をお願いしたいのですが」
若干引きつった顔で依頼をする佐伯さん。相手の男性は無表情のまま、メモ用紙のような紙に何やらつらつらと書いて行き、ピッと破って佐伯さんに差し出した。
「今回の事務手数料になります。保管の際は買い取り額と保管料をいただく事になります。それに手数料も必要となりますので、ある程度用意をしてからお越しください」
「わ、わかりました。では、よろしくお願いします」
お金を支払い、ぺこっと頭を下げて椅子から立ち上がった佐伯さんに、ここはなんの店なのかとたずねてみた。
「ここは店じゃねえよ。役場だよ。役場の出張窓口」
「役場が何でこんなところに?」
「死亡処理や行方不明処理をしないといけないからだよ。市民台帳の。カリーノちゃんも地上に行ったら真っ先に市民登録しないと、各種行政サービスが受けられないから覚えておいてね」
言われてみれば、今の人もの凄いお役所臭だったよね。
それにしても、市民登録だの、役場だの、行政サービスだのって、本当にここは異世界のダンジョンなのかな?
「お~い、真穂ちゃん、今日のテントを探しに行こうぜ」
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