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ノスタルジック・ダンジョン ~おかしな仲間たちと行くコント仕立てのダンジョン攻略~  作者: 敷知遠江守
第6章 洞窟掃除屋③

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第23話 スケルトンの正体

夢野真穂(魔法少女プルシェリア)

クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」

HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい


佐伯瑠

クラス:狩人 +レッドホーク357マグナム

HP:高め、MP:低い、STR:高め、VIT:高い、DEX:凄腕、INT:低め、AGT:素早い

「この世界に来て、ゴブリンの腰巻一丁だった俺は、どっからどう見ても不審者だったんだ」


 酒を持つ手を震わせながら、ポツポツという感じで佐伯さんは語り始めた。


 何とか生き残らないとと、一人でがむしゃらに地上を目指していた。すると、ある頃を境に徐々に人の姿を見かけるようになってきて、それと反比例するようにモンスターに会う機会が無くなってきた。明らかに地上が近い。弾む足取りで冒険者が来た方向に進んで行った。すると突然、向うからやってきた女性冒険者の一人が「モンスター!」と呼んで魔法をぶっ放してきたのだそうだ。


「酷いと思わないか? そりゃあさ、確かに酷い恰好だったのは認めるよ。髭も伸び放題だったしな。だからって何もいきなりモンスター呼ばわりして、火焔魔法を飛ばしてくる事無いと思わないか?」

「……でもゴブリンから奪った腰布一枚だったんですよね? 髭ぼうぼうで。普通にそういうモンスターいそうですよね」

「そんな奴、見た事ねえよ!」


 当時の事を思い出し、佐伯さんはやけ酒でも呑むかのように一気に〇崎のウィスキーを喉に流し込んだ。


 ショックでそこから佐伯さんは地上に出る事ができなくなってしまったのだそうだ。食料も底を尽き、水場はどこに行っても相性の悪いスライムだらけ。喉の渇きは徐々に精神を疲弊させ、さらに萎縮させていった。


 地上にも出られず、食べ物になりそうなモンスターもいない。おまけに水も無い。絶望感で徐々に体から力が抜けて行き、気が付いたら小部屋で大の字で寝ていた。徐々に気が遠くなっていく。ここまでか……ここで死ぬのか……


「目が開いたら一人の女性が介抱してくれていたんだよ。これがとびきりのカリーノちゃんでさ」

「おっぱいの大きい?」

「まあ、そのなんだ、良いおっぱいしてたよ……ぐわぁぁ、痛でででで!」


 頭のサークレットが締まってのたうち回る佐伯さん。

 今、明らかに私の胸見てたよね。その女性と私のを比べてたよね。くくく、良い気味だ。


「くそっ、痛ぇって! これがあるんだから変な事言うんじゃねえよ!」

「すぐにそうやってエッチな事考えるから悪いんじゃないですか」

「こういうのは男の性なの! 酒呑んだらトイレが近くなるのと一緒なの!」

「はいはい。で、その女性がどうしたんですか?」


 かなり酔いが回ってきたようで、少し赤い顔をした佐伯さんは遠い目をして天井を仰ぎ見た。


 女性は冒険者で戦士。名は牧原まきはらかなで。少しウェーブのかかった暗いブラウンの髪が特徴的な女性だったそうだ。

 最初、こんな自分を介抱してくれるなんて、まるで聖女のようだなんて感じていた。だが実は全くそんな事は無く、楓は非常にサバサバした女性だった。佐伯さんを介抱したのも『身ぐるみ剝がされて捨てられて可哀そう』という憐みからだったらしい。


 話を聞けば、一緒にダンジョンに潜るパーティメンバーがいたのだが、喧嘩別れしてしまったのだとか。それで生活費を稼ぐために一人で低層階に潜って討伐をしていたところ、死にかけている佐伯さんを発見したという次第らしい。

 自分は飛び道具が使えるから、もしかしたら良いパートナーになれるかもしれない、そんな話をすると楓さんはそれを鼻で笑った。こんなダンジョンで飛び道具なんかが役に立つかと言って。ただ、足手まといにならないなら付いて来ても構わないとも言ってくれたそうだ。


 女性が一緒にいてくれる、それだけで腰巻一丁でもモンスター扱いされなくなった。服装も含め自分の風貌は何も変わっていないのに。

 晴れて地上に出た佐伯さんは、服を買って本格的に装備を整えて、楓さんと一緒にダンジョンに潜る事になった。


「いやあ、これがさ、強いのなんのって。武器はメイスだから、決して動きが早いわけじゃないんだ。むしろ緩慢にすら感じるんだ。だけど、とにかく一撃が重いんだよ。どんなモンスターも一撃って感じなんだ」

「佐伯さんとは真反対ですね」

「そうなんだよ! あいつさ、いつも俺の銃の事を豆鉄砲って呼びやがって。だけど相性はバッチリだったんだぜ。俺が銃で足止めし、その敵の頭をあいつがかち割るって感じでさ」


 ここまで少し楽しそうに思い出話を語っていた佐伯さんが、急に戻っていた笑顔をふっと消してしまった。


 相性が良いというのは楓さんも感じていたらしい。地上に戻ると、よく朝まで二人で飲んだくれたのだそうだ。酔うと楓さんは陽気になり、「私たちは最強のパートナーだ」と豪語していた。


 そんなある日の事だった。

 上層では敵無しと感じた楓さんが、このまま中層に行ってみないかと持ち掛けてきた。はっきり言って自分のレベルで中層に行くのは死にに行くようなもの。今ならそうはっきりとわかる。だがその時には何だか行けそうな気がしてしまっていた。


「中層に行くまでにな、ボスの間ってのがあるんだ。それを倒さないと先に進めないんだよ。その事、あいつも知らなかったみたいなんだよ。そこでがっつり返り討ちにあっちまってな」

「まさか、楓さんって……」

「……ああ、俺を逃がすためにそこに残ったんだ」


 今までの話の流れからして、その楓さんという女戦士が、さっきのスケルトンという事なのだと思う。あまりに凄惨な話に何と声をかけて良いか想像もつかない。

 だってその人、二度も佐伯さんの命を救ってくれた人って事なんだよね。そんな人が目の前にモンスター、それも動く屍『スケルトン』として現れただなんて。それってその時に死んじゃったって事だし、死んじゃったのになおもモンスターとして彷徨ってるって事だし、このままだと誰かに討伐されちゃうかもしれないって事なんだよね。


 二人とも黙っているせいで、部屋がシンと静まり返ってしまった。佐伯さんがコップに残っていたウィスキーをくいっと飲み干し、少しトロンとした目でこちらを見てきた。


「なあ真穂ちゃん、頼みがあるんだ。俺、あいつを助けたいんだ。手を貸してくれないかな?」

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