第22話 スケルトン
夢野真穂(魔法少女プルシェリア)
クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」
HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい
佐伯瑠
クラス:狩人 +レッドホーク357マグナム
HP:高め、MP:低い、STR:高め、VIT:高い、DEX:凄腕、INT:低め、AGT:素早い
え!? 今この人、『元の世界に戻れる』って言った?
いやいやいや。無理じゃないかなあ、普通に考えて。だって私、目撃した人が漏れなくトラウマになるような、見るも無残なグロ映像みたいな死に方してるんですよ? 戻ったところでどうだって話ですよ。それにあんな上司にいびられ続けるような世界なんかに戻りたいかと言われたら、正直微妙というか。
「もしかして、真穂ちゃんは元の世界に戻りたくないのかな?」
「佐伯さんは戻りたいんですか?」
「そうだなあ。もう一度人生をやり直せるっていうなら、戻っても良いかなって思うかな」
ああ、そっか。何もあの時間軸に戻らなくても、それ以前、例えば楽しかった高校時代に戻るという手もあるわけか。
……言うほど楽しかったかな、私の高校時代って。
あれ? じゃあ私のこの世界での目的っていったい?
「まあ、願いを叶えて貰える云々はあくまでそういう噂だから。俺は純粋にこうやって銃が撃てるってだけで満足かな」
「じゃあ、最下層を目指す気は無いって事ですか?」
「ちょっと前まではそう考えてた。でも今はそうじゃない。真穂ちゃんに会えたからね」
なんでこう、隙あらば恰好付けた言い方するんだろう、この人。あんまり言われるから単なる痛い人に見えてきちゃってるじゃん。
「真穂ちゃんに会えて、銃がレベルアップするってわかったから、更なる強力な銃が撃ちたくなったって意味だよ」
「気まずくなるので、変な言い方するの控えてください」
「わかったわかった。悪かったよ」
爽やかな笑顔で白い歯を見せて笑う佐伯さん。ちゃんとしてる時は絵になるのにね、この人。
「そういえば、銃ってそれだけなんですか?」
「どういう事?」
「私も全然詳しいわけじゃないですけど、映画なんかだと連射できるやつとかありますよね」
あれ? 私、なんか変な事言ったかな?
きょとんって顔で見られちゃったんだけど。
「真穂ちゃんが俺に興味持ってくれて嬉しいよ。実は嫌われちゃったのかもって不安に思ってたんだよね」
「スケベな事ばっかりしてくるんですから、嫌われて当然じゃないですか?」
「そいつは失敬」
豪快に笑いながら、佐伯さんは胸のホルダーから銃を取り出した。おもむろに前方の闇に向かって一発発射。さらにもう一発。
「恐らくだけど、レベルが上がったら使える銃の種類も増えるんじゃないのかな。こういうハンドガンだけじゃあ大量の敵相手はしんどいからね」
「銃ってどんな種類があるんです?」
前方にゴブリンの姿が見えた。ところがゴブリンは眉間を見事に撃ち抜かれ、一撃で倒されている。さらにその奥にもゴブリン。こちらは胸部を撃ち抜かれてピクピクしている。なんとまあ鮮やかな腕前なんでしょう。
「さっき真穂ちゃんが言ったのはマシンガンってやつだよね。後は猟銃で知られるライフル銃かな。ショットガンってのもある。一口に銃って言っても、結構種類があるんだよ」
「えっと、何が違うんですか?」
「全然違うよ。同じなのは引き金を引いたら銃身から弾が出るって事だけで。マシンガンなら連射ができるし、ショットガンなら散弾銃が飛んでく。ライフルなら狙撃ができる。このハンドガンが一番オーソドックスなんだよ」
先ほどから佐伯さんは喋りながら銃をパンパンと前方に撃っている。そして歩いて行くとゴブリンの死体が転がっている。極度の鳥目の私には単なる暗闇にすぎないんだけど、この人はこの虚空の先にちゃんとモンスターが見えているらしい。
「しかし、レッドホークは撃ってて気持ちが良いな。これまでと違って、ゴブリンがどいつもこいつも一撃だ」
「ほんと、凄い腕前ですね。もしかして転生前はオリンピック選手だったりして」
それまで嬉しそうに喋っていた佐伯さんが急に黙ってしまった。無言で弾を作り出して銃に込めて行く。その都度カチャカチャという金属音がする。そして、銃をクイっと横に振るとカチャっという音と共にドラムがセットされる。
うんうん。その仕草、ほんと格好良い。
「……そんなまともな人じゃないよ。前の世界の詮索はあまりして欲しくないかな」
ぐぅぅぅぅ
なんでこのシリアスな雰囲気で、私のお腹は返事をしてしまうのかなあ。ほんと恥ずかしい。
「そういえばお腹空いたね。もう少し行くと休憩できるところがあるから……ん? あれはやばいな」
急に佐伯さんが足を止めてしまった。それまでお互い声と足音だけが聞こえていたのに、それ以外の音が聞こえるようになった。洞窟の奥から何か変な音がしている。このカラカラという乾いた木の棒がぶつかるような音はなんだろう?
「俺、あいつと相性が悪いんだよ」
「あいつって?」
「スケルトンだよ。細いから弾を当てづらいんだよ」
この音、骨の音って事? 気持ち悪ぅ……
「なあ、真穂ちゃんの魔法で卵に変えられないかな?」
「多分無理だと思います。きっと向こうの方がレベルが上でしょうから」
「そっか。じゃあ逃げるしかないな……来た道を一旦戻るぞ。あいつをやり過ごす」
やってきた道を戻ると、細い路地のような所を入った先に小さな小部屋があった。その小部屋に入り出口を魔法で塞ぐ。
徐々に近づいて来るカラカラという音。どうやら近くで足を止めたらしい。照明星を消したせいで、スケルトンの姿は見えない。だけど、近くで何かをしている骨を想像すると、あまりに不気味な絵に身震いしてしまう。どうやら佐伯さんも同じらしく、部屋に入ってから膝を抱えて震えてしまっている。
どうも諦めたようでカラカラという嫌な音が徐々に離れて行くのを感じる。
「佐伯さん、行っちゃったみたいです。どうせですからここで食事休憩にしましょうか」
「……真穂ちゃん、すまない。強い酒をくれないかな?」
震える声で言う佐伯さんに、ポシェットから〇崎のウィスキーを手渡した。それを奪い取るようにし、差し出されたコップに雑に注いでグイっと喉に流し込んだ。この感じ、何かあったらしい。
「あの、どうかされたんですか?」
両の目を見開いて、唇を震わせて、真っ青な顔を佐伯さんは上げた。何かを喋る前に「ふぅ」を酒気を吐き出した。
「あれは……行方不明になっていた俺の知り合いだ。あの鎧、あのメイス、間違いない。あいつ、スケルトンになっていやがった……」
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