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ノスタルジック・ダンジョン ~おかしな仲間たちと行くコント仕立てのダンジョン攻略~  作者: 敷知遠江守
第4章 洞窟掃除屋①

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第16話 もう一人の転生者

夢野真穂(魔法少女プルシェリア)

クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」

HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい


佐伯瑠

クラス:狩人

「あの、さっきからカリーノちゃんって言ってますけど、なんですか、それ?」


 部屋を出て二人で出口に向かって歩いて行く道中、無言になるのが気まずくて、話題の一つとして聞いてみた。


「君みたいな、魅力的な女性の事さ」


 右掌を上に向けて、こちらを指差し、流し目で言ってきた。本人はキザのつもりなのかもしれないけど、全然格好良く無いし、そもそもポーズが古い。しかも変に声色を変えるものだから、背筋がぞわりと泡立ってしまう。聞くんじゃ無かったと大いに後悔した。


 まったく、プルシェリアだの、カリーノだのと、どいつもこいつも人を変な名称で呼びおってからに。私には夢野真穂という立派な名前が――


「そういえば、カリーノちゃん。まだ名前を聞いて無かったね」


 そうでした。まだ名乗ってませんでした。それは愛称で呼ぶしかないよね。


「失礼しました。私、夢野真穂と言います」

「へえ、真穂ちゃんっていうんだ。可愛らしい名前だね。いつこっちの世界に来たの?」


 ……え?

 今この人なんて言った? 『こっちの世界』って言った? えっ、どういう事? 私が転生してこの洞窟に来た事を知ってる?

 なんで? なんでその事を知ってるの? えっ、怖い怖い怖い……


「ああ、ごめん、ごめん。そんなに警戒しないでも良いよ。これまでの感じから、何となく察しただけだから。なんせ、俺も転生でこっちの世界に来た人だから。この銃をいただいてね」


 そう言うと佐伯は右手の人差し指を上に立て、スイッチみたいな部分の輪っかを指に通して銃をクルクルと回し始めた。銃をいただいたという事は、恐らく私のスティッキのように、特殊能力と一緒に転生の贈り物としてもらったと言う事なのだろう。


「それって銃ですよね。私銃ってよくわからないですけど、弾ってどうしてるんですか? 弾って消耗品ですよね。お金ってどうされているんですか?」

「俺は掃除屋だって言ったけど、ギルドには狩人ハンターとして登録してるんだ。だからモンスターを狩れば褒賞が出る。それと俺は火と土の精霊を操って弾丸を作り出す事ができるんだ。だから俺の魔力が枯渇でもしない限り、弾は無限に作り出す事ができる。つまりタダ」


 こんな風にと言って左手の指を何かをこねるように動かして六発の弾丸を作り出してみせてくれた。手に取ると本物の弾。もちろん実物なんて見た事ない。よくテレビドラマなんかで見るそれだった。

 佐伯は私の指からひょいと弾を取り上げ、銃のドラムの穴に差し込み、右手で銃を右に振ってドラムをしまった。カチャリという金属音と共にドラムが拳銃にセットされる。その仕草は実に格好良い。


「これはさ、M317エアライト・キットガンって言ってね、22口径の弾丸を撃ち出せる銃なんだ。と言ってもカリーノちゃんにはわからないと思うんだけど、実は威力の低い玩具みたいな銃なんだよ」

「すみません、銃の事を言われても私……」

「だよね。ようはさ、殺傷能力が低いんだ。だから俺も中々ここから下の階層に行けないでいるんだよ」


 下の階層かあ。そう言えばこっちに来る時、あの年増が言ってたっけ。『モンスターを倒してレベルアップしながらダンジョンの最下層に挑む』仕事だって。でも、最下層って何があるんだろう? 何か目的があってそこを目指すんだよね? そこのところまだ聞けてなかったな。後でちゃんとキュイに聞かないと。


「で、カリーノちゃんはいつこっちの世界に来たの?」

「何日前だったっけ。えっと、多分まだ来て数日です。だから全然この洞窟の事がわからなくって。とりあえず地上を、出口を目指そうって彷徨い歩いていたんです」

「そっか……」


 それまで何となく雑談という感じの会話を交わしていた佐伯が、急に真剣な表情になり、拳銃の銃口をこちらに向けてきた。


「え?」


 思わず両掌を広げて後ずさってしまう。だが、佐伯はじっとこちらを睨みつけて右手を伸ばした状態で銃を構えている。

 私、なにかまずい事を言ってしまったみたい。どうしようどうしよう……魔法で卵になれって言ったらなってくれるかな? でもどう考えても向こうの方がレベルが高そう。剣はどうかな。ダメ。今から剣を出してもその前に撃たれちゃいそう。


「動くな!」


 嘘でしょ……最悪じゃん。こっちに転生して数日でまたあの年増のとこに逆戻りなの? そんな事になったら、あいつに何を言われるかわかったものじゃないじゃない。それこそ閻魔大王の秘書にされちゃうじゃない。


 パン!


 ああ……短かったな、私の第二の人生……

 ……。

 ……あれ? 生きてる?


「グギャギャ……」

「うわぁぁ!」


 ご、ゴブリンが頭から血を流して私の足を掴もうとしてる! キショ! キモ!


「往生際の悪い奴だ」


 パン! パン!


 佐伯がさらに銃弾をゴブリンに叩き込んだ。一発は胸部、もう一発は頭部。恐らく二発目が致命的だったのだろう。手足をピクピクとさせて、ゴブリンはそのまま動かなくなった。その代わりに体から魔石が浮かびあがる。


「怖がらせちゃってごめんね。そいつがスニーク状態で近寄ってくる気配を感じたんだよ。でもさっき言った通り、このキットガンは威力が低くて……ん?」

「どうかされたんですか?」

「レベルが上がった。新たな銃を手に入れたって言われたんだ」


 スイッチみたいな部分の輪っか部分に指を入れ、クルクルと回して脇のところのホルダーへと銃をしまった佐伯。再度銃を取り出すと、先ほどまでの物とはほんの少しだけ色と形の違う銃が出てきた。先ほどの銃は鈍色だったのだけど、今度の銃は銀色。


「こいつは……レッドホーク357マグナムじゃないか! そうか、これが俺の成長って事なのか……」

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