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ノスタルジック・ダンジョン ~おかしな仲間たちと行くコント仕立てのダンジョン攻略~  作者: 敷知遠江守
第4章 洞窟掃除屋①

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第15話 掃除屋佐伯

夢野真穂(魔法少女プルシェリア)

クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」

HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい

 カリーノちゃん? 何それ?


 少し癖の強い髪だけど、顔は結構精悍な感じ。かなり鍛えてるらしく、見事に逆三角形の体付き。特に胸筋が凄く、Tシャツがはちきれそう。そしてどうしても視線が釘付けになってしまうのは、その右手にある拳銃。魔法やら剣やらゴブリンやらと、ファンタジーの世界だとばかり思っていたのに、この世界には火器があるらしい。


「ん? なんだこれ? 鍵穴がないじゃないか。あいつら、どうやってこの牢の中にカリーノちゃんを閉じ込めたんだ? 待っててくれ、すぐにここを開けるからさ」


 やってきた男が、どこかに鉄格子を開ける仕掛けがあるはずだと、しゃがみ込んであちこちを調べ始めた。そんな事したって魔法で出したのだから無駄なのに。


「あの、どちら様なのでしょうか?」

「ん? ああ、自己紹介がまだだったね。俺は佐伯さえきりゅう。この洞窟で掃除屋をやっている者だ」

「清掃の作業員って事ですか?」


 どうやら私が言ったのは的外れだったらしい。佐伯は「ズコー」と口走って両足を前後に開いた。ずっこけ方、古っ……


「そうじゃないよ、カリーノちゃん。俺はゴブリンのような、本能ではなく邪心によって探索者に危害を加える邪悪なモンスター、ようは洞窟のゴミだな、それを専門に排除してるんだ」


 ニカッと良い笑顔で微笑まれちゃったけど、何言ってるのか全然わかんなかった。えっと、とりあえず敵では無いという認識で良いのかな?



「しかし、ゴブリンめ、こんなところにこんなにカリーノちゃんを閉じ込めるだなんて許せんな。くそっ、鍵穴はどこにあるんだ?」

「あの、いくら探しても鍵穴なんて無いと思いますよ。その鉄格子は私がやったんで……」

「へ? もしかして、その見た目で実はトロル以上の怪力の持ち主とか?」

「そんなわけないでしょ!」


 私のツッコミが面白かったのか、キュイはヒレをパタパタさせて大笑いしている。笑ってないでキュイの方から事情を説明してくれたら良いのに。


「私が魔法でこれを作り出したんです」

「魔法で? カリーノちゃんは土魔法を操る魔法使いって事なのかな?」

「えっと……私もその辺りの詳しい事はわからないので、この変なイルカに説明させますね」


 「変なイルカでは無いキュイ!」と抗議しているが、そこは無視。キュイを見て、さっさと説明をしてあげてと促す。ところがその前に佐伯が驚く事を言い放った。


「カリーノちゃん。そこに誰かいるのかい? もしかしてカリーノちゃんは霊媒師で背後霊と会話ができるとか?」

「えっ!? ここに青い変なイルカがフワフワ飛んでると思うんですけど、そいつと話をしているんです」

「そ、そうなんだ。す、凄いね……」


 あれ? 何だろう……この感じ。なんだかわからないけど、中学生の時のトラウマが蘇ってきた。変な発言を繰り返していたあの頃、周囲の女の子たちが私を見ていた目と同じ目だ。む、胸が締め付けられる変な苦しみが。


「言い忘れていたけど、僕の存在はプルシェリアにしか認識できないんだキュイ」

「それ、絶対言い忘れてて良い情報じゃないよね!」

「えっと、今のもあの男からは虚空に向かって怒鳴ってる変な人に映ってると思うんだキュイ」

「変な人とか言わないで!」


 ……しまった。やばい、凄い残念な人を見るような目で見られてる。何か私、こっちの世界に来てからホントにロクな事がない。

 ……前の世界でもロクな事が無かったっけか。それは残念な人を見る目で見られるよね。


「あの、私、魔法少女なんです。で、このスティッキで魔法を唱えて、それでその鉄格子を出したんです」

「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ、俺はこの辺で……」

「ちょっと待って! 帰らないで! ほんとなんだから!」


 そんなに痛い人を見るような目でこっちを見ないで欲しい。露骨に関わるんじゃなかったって顔をしないで欲しい。じゃないと心が折れそう。


「今、その鉄格子を消しますので――」

「待って!」


 急に佐伯は真剣な目付きとなり、手にした拳銃から中のドラム部分を取り出した。何かを持っているような感じには見えないが、左手の指で手の腹をこすると弾丸が現れるらしく、それを一つ一つドラム部分に込めていく。八発分の弾丸を込め終えると、持ち手を左右に振り、ドラム部分を元に戻した。その所作一つ一つでカチャリという金属音がして、とても格好良い。


 左の脇の間に拳銃を挟み、横目で洞窟の奥を見ながらじっとタイミングを見計らっている。


 パン!


「グォオオアア!」

「ちっ、殺傷能力が低すぎか」


 バタンバタンという大きな足音をさせて、大きな何かがこちらに近づいて来ているらしい。佐伯はその生き物に向けて右手を伸ばして拳銃を構え、狙いを付けている。


 パン! パン! パン!


 バタンという何かが倒れる大きな音が部屋の中まで聞こえて来た。佐伯は拳銃の銃口から出る煙にふっと息を吹きかけて格好つけている。

 悔しいが実に絵になっている。よく見るとこの人、四肢が長くて結構スポーツマン体形をしてる。この人は頼りになるかもしれない。


「あの……私、この洞窟から出たいんですけど、案内をお願いする事ってできますか?」


 すると佐伯は私を上から下まで舐め回すように観察。そして目尻を垂らし、スケベそうな非常にだらしない顔に変わった。


「良いけど、俺の雇い料は高いぜ」

「私、まだお金とか持ってないんです。ですので仕事をして返すっていうのでも構いませんか?」


 佐伯の口の端がぐいっと上がり、スケベそうな顔がさらにスケベさ増した。


「ぐふふ、そんな事より、良い方法がある。ここで一晩俺と一発――」


 佐伯はジャンプしてこっちに向かって来ようとして、鉄格子に引っかかってしまった。しかも勢いよく挟まったせいで抜けないらしい。

 ……もしかして馬鹿なのかな、この人。


「もしかして、私、早まったかも……」

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