第14話 大量のゴブリン
夢野真穂(魔法少女プルシェリア)
クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」
HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい
「もう、うるさいなあ。どうしたって言うのよ」
目をこすりながら半身を起こすと、目の前にドアップのキュイがいた。反射的に体を反らしてしまった。
「うわっ、最悪の目覚め……なんでこんな変なイルカと寝起きにキスしないといけないのよ……もう一回寝よ」
せっかく美味しいお酒呑んで良い気分で寝てたってのに、変な起こし方しないで欲しいんだよね。まったく。
「うわあ、ちょっとプルシェリア! 寝ないで欲しいんだキュイ!」
わざわざ耳元に近づいて大声を張り上げやがった。なんでダンジョンにまで来て、こんな変なイルカに私は叩き起こされなきゃいけないんだろう。別に会社に遅刻するわけじゃないんだから、好きな時間まで寝かせておいて欲しいのよね。
うるさいなあ、もう。
「わかったわよ。もう、何だっていうのよ……ふわぁぁ」
「どうしたもこうしたも無いキュイ! 敵襲キュイ! 入口の岩が砕かれちゃったんだキュイ!」
ヒレを慌ただしく動かして出口をキュイが指している。キュイが示す方を見てびっくり。入口は鉄格子で辛うじて守られている状況で、その向こうにおびただしい数のゴブリンが集結していた。
「何となくだけど、こういう動物園みたいね」
「何を呑気な事を言っているんだキュイ! これが動物園だとしたら、見世物になっているのはプルシェリアの方キュイ!」
なるほど。確かにそういう見方もできるかもしれない。こっちの方が人数が少ないもんね。そう考えたら千客万来じゃん。
「何をどっしり構えているんだキュイ! 両の目をかっ開いてあのゴブリンの数をちゃんと見るんだキュイ! 鉄格子が破られちゃうのも時間の問題なんだキュイ!」
「ふふふ、どうやら動転して私の能力を忘れてしまっているみたいね。まあ見てなさいって。ミラクル マジカル ラララララ! 卵になれ!」
どんなに敵の数が多かろうが、私の魔法は全てに問答無用で効いてしまうのよ。だから数なんて問題じゃないの。むしろ数が多ければ『雑魚狩り無双』の本領発揮ってなもんですよ。
魔法の掛け声に合わせ、マジカルスティッキの先端の大きな星がクルクルと回転し無数の小さな星を放出。何体かのゴブリンが星の光に包まれて卵に変わっていく。ところが変わったのはごく一部だけ。他のゴブリンが無情にもその卵を踏み潰し、鉄格子の外に殺到している。
「あれ? 何で? なんで卵にならないの? ミラクル マジカル ラララララ! 卵になれ!」
あれ? なんで? マジカルスティッキの大きな星はクルクルと回転するものの、星が飛んでいかない。もしかしてスティッキ壊れちゃった?
「どうして? なんで卵にならないの?」
「忘れたのかキュイ? プルシェリアの魔法は同じレベルまでの敵にしか効果が無いんだキュイ! あれはさっきまでのゴブリンじゃないんだキュイ! 少しレベルの高いゴブリン・ミリシアなんだキュイ!」
え? じゃあ私の魔法は効かないんじゃない! 魔法が効かなかったら、私なんて一般人以下のステータスしかないのよ? 竜石の回数が切れちゃったマムク〇トなのよ?
やばい、やばい、やばい! 久々に死の恐怖が襲ってきている。髪がぞわりと総毛立つ嫌な感じ。それが下に下がって行き、背中がぞくぞくとする。
「ど、ど、どうしよう!」
「……このまま鉄格子が壊されたら、あの数のゴブリンに取り囲まれてめった刺しにされて殺されてしまうんだキュイ。その前に、ウリ坊の時の剣を作って、鉄格子が無事なうちに数を減らしていくべきキュイ!」
ああ、あの玩具みたいな剣か。確かにウリ坊相手に凄い切れ味だったから、あれならもしかしたら。鉄格子があるんだから鉄格子のこっち側で剣を突き刺せば、安全に狩れるかも。だけど一つ疑問がある。
「だけど問題が一つあるんだキュイ」
「やっぱりね。私も同じ疑問を抱いてたのよ。きっと、同じレベルの敵にしか効かないんでしょ、あの剣も」
「いや、あの剣は普通に剣なので、そこそこレベルの高い相手にも効果はあるんだキュイ。問題はプルシェリアがまともに剣を扱えない事なんだキュイ。どんくさいウリ坊と違ってゴブリンはすばしっこいんだキュイ」
なるほど、私ってステータスが壊滅的なんだもんね。って! やかましいわ! こんな切羽詰まった状況で私の低ステータスをイジってくるんじゃないっての。
凄い怪力のゴブリンがいて、力任せに鉄格子を棍棒でガンガンと叩き始めた。一撃ごとに鉄格子が歪み、隙間が空いていく。このままでは踏み込まれるのも時間の問題。やるしかないっ! やらなかったら、またあのオバ……女神様の元に逆戻りになっちゃう。
「ミラクル マジカル……」
パン!
ん? 今の破裂音はなんだろう?
「ピギャッ!」
え? ゴブリンが勝手に頭から緑の液体を噴き出して死んじゃった……
パン! パン! パン!
「キシャアァァ!」
「ギギャアァァ!」
「グギャアァァ!」
え? え? 何が起きてるの?
「プルシェリア、きっと助けが来たんだキュイ! こちらからも剣で斬りつけるんだキュイ!」
「わかった! ミラクル マジカル ラララララ! 剣よ出ろ!」
マジカルスティッキの先の星の飾りがクルクル回り、そこから小さな星が噴き出し、星たちが剣の形で並び、星の宝飾が随所に施された剣が現れた。私の身長と同じくらい刀身の長い諸刃剣なのに、握るとリレーの時のバトンくらいの重量しか感じない。
極軽の剣を格子の隙間に向けて振り下ろす。すると格子の近くで混乱してキョロキョロと周囲を見渡していたゴブリンが一体真っ二つに裂け、緑色の血を噴水のように噴き出した。
ゴブリンを斬り殺したすぐ後にまた破裂音が六回聞こえ、目の前ゴブリンが断末魔の叫びをあげてバタバタと倒れた。それも正確に六体。
一瞬だけど、何か小さな物が飛んできて、ゴブリンの頭部を貫いていくのが見えた気がする。破裂音、小さな物体、そこから導き出される答えは恐らく一つだけ。たぶん、向こうで銃を撃っている人がいる。
パン!
「グゥグガガ……」
一際大きいゴブリンの胸部に見事に球が命中。まるで立て掛けてあった箒が倒れるように、後ろにバタンと倒れた。その銃弾はゴブリンたちの戦意を完全に挫いてしまったらしく、我先にと奥の方へ逃げ出して行った。
コツン、コツンという足音が近づいて来る。よく考えたら、助けに来てもらえたと決まったわけでは無い。近づいて来る人もまた悪人かもしれない。
剣を出口に向けて構えて、じっと足音が到着するのを待った。やってきたのは長身細マッチョの男性であった。
「なるほどね、あいつら、洞窟で拉致した人を監禁してたってわけか。わぁお! とびきりカリーノちゃんなお姫様発見! お助けに参りましたよ!」
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