第13話 誰にでも効くの?
夢野真穂(魔法少女プルシェリア)
クラス:魔法使い +使い魔イルカの「フリッツ」
HP:普通、MP:高い、STR:貧弱、VIT:根性無し、DEX:不器用、INT:低め、AGT:どんくさい
「どうやら、この階のロビーみたいなところに出たみたいだキュイ。きっと上の階に行く通路も近いんだキュイ!」
「それって、もしかして、魔物もわんさといるって事?」
「魔物もいるし、下層に行こうとする人もきっとここを通るんだキュイ!」
「え!? じゃあ、その人に聞けば地上に出れるんじゃない!」
それにしても広い。しかもこの場所だけ少し明るい。
案内星は真っ直ぐ奥を示しているけど、この薄暗い中、それを信じて歩いて行ったら、あっという間に敵に囲まれてましたなんて事になりそう。ここはやはり、キュイには馬鹿にされたけど、「世界樹〇迷宮」で得た知識「右手の法則」に従って壁伝いに奥を目指すべきな気がする。
コツン、コツンと、乾いた足音が広い空間に響き渡っている。この足音を聞いて、モンスターが寄って来やしないか心配になる。
「ねえ、一つ聞きたいんだけど」
「そんな小声でどうしたキュイ?」
「しっ! 大声出してモンスターが寄って来たらどうするのよ!」
「あっ! 申し訳なかったキュイ。で、質問って何キュイ?」
ここまでの会話でモンスターの近寄ってきている気配が無いか耳をそばだててみる。足音も聞こえないし、変な声も聞こえない。どうやら大丈夫そう。
「えっとね。これまでモンスターを魔法で卵に変えてきたじゃない。それって、どのモンスターに対してでも効くの?」
「良い所に気が付いたキュイ。実は残念ながら強敵には効かないんだキュイ。ちょっと前にプルシェリアはレベルが上がったけど、実はこれまで倒したモンスターは全部レベル1だったんだキュイ」
でしょうね。ゴブリンやスライムってゲームじゃ最初期の敵として定番だもんね。
「だけど、それでもプルシェリアの魔法は凄いんだキュイ。敵の大きさ、属性、数に関係無く、雑魚相手なら問答無用で効いちゃうんだキュイ。まさに『雑魚狩り無双』なんだキュイ」
そういう言われ方されると、なんか私の魔法ってショボい。あと『雑魚狩り無双』って称号、最高にダサい。
「具体的にはどの程度の強敵にまで魔法が効くの?」
「レベルが同じ相手にまでしか効果は無いキュイ」
え? 私のレベルってたったの2だよね。それってつまり、レベル2までの敵にしか魔法の効果が及ばないって事じゃない。
「えっと……ちょっと待って。私のレベル以下のモンスターってどのくらいいるのかな?」
「数えられる程度キュイ。ほぼ全てのモンスターは今のプルシェリアよりレベルが高いキュイ」
「はあ!? じゃあ、どうしたら良いのよ! もし魔法が効かない相手が出たら、私、生きていられる自信が無いんですけど」
「……声がでかいキュイよ?」
しまった……
うわっ、今ので何かが近づいてきちゃった気がする。
やばっ、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
そうだ! たしかこういう時は狭い通路みたいなところに逃げ込んで、敵が通り過ぎるのを待つんだった。 明かりを消して、案内星も消して、うわあ、焦る!
ズシン ズシン ズシン……
ふう。間一髪。
それにしても、何、今のデカいゴブリン! 一瞬土俵の上の方たちかと思った。しかも、あんな太い棍棒、どこで手に入れたのやら。
「今のはヤバイキュイ。プルシェリアとは大きくレベルがかけ離れていたんだキュイ」
「今のもゴブリンなんだよね。凄い大きかったよね」
思わず物陰からちゃんとさっきのゴブリンが遠ざかったのを確認してしまう。闇の向こうへ消えていったらしく、足音もかなり小さくなっている。
「さっきのはゴブリンの親分、ホブゴブリンキュイ。でも、変だキュイ。普通、ホブゴブリンは一人では行動しないんだキュイ。それがなんでこんなところに一人でいるんだキュイね?」
「それは、子分だけ倒されちゃったって事?」
「わからないキュイ」
困ったな。あんなのがこの辺をウロチョロしてるとなると、一刻も早くこのロビーを抜けて地上方面に行きたいんだけどなあ。さっきのデカブツ、出口の方向に歩いて行っちゃったのよね。
ぐぅぅぅ
「……お腹空いてきちゃった」
「なんだか節操が無いキュイね」
「仕方ないじゃない。私の意志でコントロールできるようなものじゃないんだから」
「じゃあ、どこか安全な空間を見つけて、一旦落ち着いた方が良いかもキュイ」
その辺りにあった小さな石を拾い投げてみる。奥の方に反響した音が吸い込まれて行くように感じる。「沈黙〇艦隊」のピングの説明だと、反響が帰って来ないという事は、この先にも通路が伸びているという事になる。
「ねえ、この先に行ってみない? もしかしたらこの先にも部屋があるかも」
「なんでそれがわかるんだキュイ?」
「投げた石の音が帰って来なかったのよ」
「何を言ってるのかちょっと意味はわからなかったキュイ。でも、ここまで緊張し通しでプルシェリアは疲れているみたいキュイ。どこかでゆっくり食事にした方が良いキュイ」
意見は一致したみたい。じゃあ、照明星を点けて、小部屋を探して奥に行ってみよう。
それにしても、私は女性としても背が低い方なんだけど、その私でちょうど良いって、かなり狭い通路ね。
お! この先に入口のような穴が開いてる。もしかして小部屋の入口かな?
うっ、うわぁぁぁ! ご、ゴブリンが、せ、千客万来だ!
「ミラクル マジカル ラララララ! 卵になれ!」
マジカルスティッキの先の星の飾りがクルクル回り、そこから小さな星が噴出。ゴブリンの集団を包み込み、次から次へと卵に変わっていく。
「あ、あっぶなっ!」
「安心している場合じゃないキュイ! 仲間が来ちゃうかもしれないキュイ! 早く中に入って入口を塞いだ方が良いキュイ!」
「オッケー! ミラクル マジカル ラララララ! 穴よ塞がれ!」
入口が塞がったから、あとは中の卵を全部壁に叩きつけて割ってと。これで、当面は安全な空間が確保できたと。おっと、忘れないようにちゃんと魔石を回収しておかないと。
「ふう……」
「これでゆっくり食事にできるキュイね」
「ねえ、魔法で作った壁だけど、あれもレベルの高いモンスターには効果無かったりするのかな?」
「魔法で作った壁といっても、単なる壁キュイ。レベルに関係無く、力の限り鈍器を叩きつけたら普通に壊れるキュイ」
という事はもっと頑丈なものを設置した方が良いって事ね。念のため、内側に鉄の格子でも設置しておいた方が良いかな。
「ミラクル マジカル ラララララ! 鉄格子よ現れろ!」
これで良し。地面に魔法で絨毯を敷いて、ちゃぶ台も出して。あとはのんびり食事時間っと。
……ふふふ。ついにこの時間がやってきたようね。水筒をロマネコ〇ティに変えてっと。う、旨いぃぃぃ! これが夢にまで見たロマネコ〇ティというものか!
やばっ! これ旨すぎてとまんない。今度ド〇ペリも作ってみよう。
おお! 生ハムも旨い! チーズも旨い! ソーセージ激旨っ!
くぅぅ、魔法って最高!
やば……疲れたところに酒を入れたせいで、もう酔いが回ってきちゃった。まだ半分も呑んでないのに……
「――リア、――るキュイ! プルシェリア! お願いだから起きてくれキュイ! 大変だキュイ!」
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