お酒ですか?お酒ですよね
期が変わってから残業が増えました…。
「それにしても」
パチパチと小枝が燃える中でスォンナさんは口を動かし始めた。対策はしていたが、ソレッティさんに喰いつきに行かないのは少々驚きだ。
「さっきの魔法は中々凄かったな」
「魔法?あぁ、炎の玉ですか」
「あれほど大きな火球は見たことがない。良い師匠でもいたのか?」
「そんなところです。もしかして、スォンナさんは魔法に興味があるんですか?」
「そんなものあるか。小さい体でよくやるなと感心しただけだ」
彼女はそう言いながらあいてむぼっくすから瓶を取り出し、直接それに口をつけた。何だか嗅いだことのある匂いがする。
「…もしかしてお酒ですか?」
「わたしは今禁酒中だ」
「お酒ですよね?」
「アルコールの入った水だ。禁酒中に役立つ」
やっぱりお酒じゃないですか。
止めようかと思っていたら、別箇所で休憩しているソレッティさんの声が聞こえた。スォンナさんは通常時から酔っているようなものなので、酒が入っていようがいまいが危険人物であるらしい。
止めるだけ無駄か。
「どうしたそんな目をして。お前も飲むか?」
「飲みたい気持ちはありますが、後ででいいです」
「冗談だ。流石に未成年に飲酒を勧めるような人間じゃない」
「スォンナさんこそ未成年でしょう。私は十八ですよ」
「酔ってるのか?」
私はリュックサックから取り出した自らのすてーたすを酔っ払いに向かって突き出した。こういう時に印刷したものは便利だ。
すてーたすが書かれている紙を見たスォンナさんは目をパチクリとしながら紙と私を交互に見ると、やがて酒瓶に蓋をしてあいてむぼっくすへと格納した。
「まさか視力がおかしくなるほど酔っていたとはな」
「寧ろ書かれていることが認識できるほどはまともみたいですが」
「いや、だって。このチンチクリンがわたしより歳上なのか?」
「暴言には目を瞑りますが、そのようです」
というよりもこの世界の人たちが大きすぎると思うのだ。最近知り合ったこの二人とか、ブレッドさんとかダリダさんとか。あんなに体がガリガリだったシンさんでさえ、身長は私より二回りほど上だった。
「世の中には不思議なこともあるみたいだな。なぁ、後で一緒に呑みにいかないか」
「後でというのは地図作成が終わってからですよね」
「終わる前でも構わないが」
「私は構うのでさっさと終わらせましょう。そのためにも、ソレッティさんとは喧嘩しないでくださいね」
「唾を吐くのはいいか?」
「それから喧嘩に発展するでしょうが」
やはりこの二人は近づけないというのが一番良さそうだ。この二人の仲の悪さは、それこそ呑みに行った時にでも聞くとしよう。
あと少しで地図作成も終わるはずだ。終わって欲しい。この疲れも一時的なものだと信じて、私は焚き火を消した。




