すぐに近づこうと
洞窟の中は暗闇に包まれている。人間とは違い、その暗闇に住む者は闇の中でも視界が遮られることはないだろう。
何が言いたいのかと言うと、アウェイな場での戦闘は不利になりやすいということだ。相手がこの場に慣れている分、不慣れな私たちは苦戦を強いられることとなる。通常なら。
「くそっ、ちょこまかと!」
だが、その環境を大きく変えるものがあるとしたら?戦況は大きく変わるだろう。
そう例えば、この暗闇を照らす太陽のような光とか。
「照らす!」
左手の灯りに魔力を注ぎ巨大化させる。膨張した炎は闇を照らす光の玉となり、暗闇に住む者の視界を奪った。
「今です、攻撃を!」
「任せて!」
こういう時一番息が合うのは、やはりブレッドさんだ。私の魔法により生まれた隙を逃さず、敵に連撃を叩き込む。
腐った死体はブレッドさんの剣により両腕を吹き飛ばされた。抵抗する術を失ったその死体は最後の反撃なのか、口から謎の液体を出そうとする。
だがその液体は、体外へ放出される前に消えた。ソレッティさんが死体を文字通り一刀両断したためだ。モンスターはいつもの通り泡となり、代わりに間抜けな音を残していく。
戦闘を終えて各々が一息ついた。一人を除き、額に流れる汗を拭っている。
「ちっ」
その除かれた一人は盛大な舌打ちを漏らしていた。
「もっとお前の苦しむ姿が見たかったんだがな」
「残念だったわね。シロカさんのおかげで何とかなっちゃったみたい」
「褒められて悪い気はしませんが、隊列を乱さないでください」
まったく、何かあればあればすぐに近づこうとする。油断も隙もないんだから。
「今度は盛大な失敗を頼む」
「あんたの前でそんなことするわけないでしょ。一生笑い物にされるもの」
「はい、そこまで。続きは出てからにしようね」
ドリーさんの一声で一度喧嘩が止まる。こういうことを何度も経験しているのかと思うと、本当に彼の気苦労が絶えないんだろうなと感じる。
「さぁ、まだ洞窟の地図作りは残ってる。一旦ここで休憩にしないか」
「いいと思います、ドリーさん。あれこれ数十分は歩いてますからね」
実際にどれくらいの大きさの洞窟なのかわからないからこそ、こまめな休憩は必要だと思う。もちろん、姉妹二人は別々の場所に座らせないといけないが。
床に落ちていた木々を二箇所にまとめ、魔法で着火させて焚き火を作る。ブレッドさんと前衛二人、私たち後衛二人に分かれてそれぞれ休憩を取り始めた。




