手が震えてますけど
「準備はいいですね?」
洞窟の前で全員に確認する。拙い作戦は昨日のうちに伝えているため、例の二人以外は首を縦に振ってくれた。
「こう目撃者が多いと、あんたもそう簡単にはあたしに手を出せないでしょうね」
「目撃者全員に手を出す可能性は考えないのか?」
「あんたならやりかねないのが笑えないわね」
「大丈夫だということで進めます」
こんな二人がいるから、私が背負った荷物は包帯や煙玉などの道具でいっぱいだ。治療道具や戦闘を回避できる道具よりも、非常食や水などを用意しておきたかったというのに。
一応それらは各人のあいてむぼっくすに収納してもらっているため、誰かとはぐれて遭難しなければ分けてもらうことができるとは思うが、やっぱり自分が持っているかどうかというのは精神的に異なるものだ。
「それでは行きましょうか」
洞窟の中での隊列は先頭をドリーさんとソレッティさんが、殿を私とスォンナさんが勤めている。ブレッドさんは間に入ってもらい、前と後ろの様子を見てもらうことにした。
ドリーさんと私は魔法で灯りをつけ、辺りを見渡して警戒を強める。前衛か後衛のどちらかが戦闘に入った際は魔法を使える私とドリーさんがサポート、先頭で戦いが始まればソレッティさんとブレッドさんが、後ろで始まればスォンナさんとブレッドさんをメインに戦う想定だ。
彼らには長々と説明をしたが、要は敵に近い方とブレッドさんがメインに戦い、それ以外はサポートに入るということだ。
「今のところ特に問題は無さそうですが」
「油断は禁物だがな」
洞窟に入ってから数分。特に問題はなく私たちは地図作りを行なえていた。一番の問題だった姉妹喧嘩も、距離を空け、なるべく会話を続けていることで今は発生していない。
「ところでずっと手が震えてますけど大丈夫ですか?」
「物を持たなければ大丈夫だ。それに、アルコールを足したところで止まるものでもない」
それって体が悲鳴を上げているのではないでしょうか。
「そんな顔をするな。医者にはもう手遅れだと言われている」
「え」
「冗談だ」
笑えない冗談は止めてください。いや、冗談に見えないのも問題ではあるのだが。
だが話してみてわかるのは、姉妹で話していた時よりもキツい印象はないということだった。笑顔も浮かべるし、言動も柔らかい。一体どんな化学反応があの姉妹の間で起きてしまうのだろうか。
とにかくだ。この姉妹を近づけなければ問題は起きない。このまま特に問題なく進めばいいが。
「みんな!前方にモンスターだ!」
ドリーさんの叫び声が聞こえた。世の中そう上手くはできていないようだった。…何だか最近、何も起きなければと思った時に限って何かが起きているような気がする。
「私はバックアップに入ります。スォンナさんは待機で、背後の警戒をお願いします」
「…あぁ。わかっているさ」
何だか不穏な間があったが、今はそんなことよりモンスターだ。
左手の上に浮かべる火球を絶やさぬように気をつけながら、私は魔法によるバックアップを開始し始めた。




