十二分にわかりました
久しぶりに会話をさせて楽しいキャラができたなぁと思いつつ、会話をさせ過ぎて話が進まないとも思いつつ…。
「というわけでですね。作戦を考えてきたわけですよ」
宿屋の一室に関係者各位を集め、先ほどまで考えていた作戦というものを発表しようとする。といっても先ほどまで考えていたことは、いかにして二人の仲を良くするかということであり、作戦自体は大したことではないのだが。
「その前に。ドリーさんとは軽く自己紹介をしましたが、貴女方とはまだでしたよね。私は城花、冒険者です」
「ブレッド、アタシも冒険者ね。シロカとは冒険者仲間ってところかな」
さて、後は向こうの二人の自己紹介なのだが。自己紹介くらいは問題は起きないだろう。…そう信じたい。
「シロカさんとブレッドさん、ね。さっきは助けてくれてありがとう。あたしはソレッティ・アーリー。普段は武器屋の店員として働いているわけね」
「紹介になってないぞ。剣や鎗を見てニタニタ笑う性格だということを伝えておけ」
「そんなの初対面で伝えるわけないでしょ?ほんと、あんたって人との付き合いができない人間よね」
「蛙の子は蛙というが、あれは身内全員に当てはまるみたいだな。わたしは家族の背中を見て真っ直ぐに育ったぞ」
「同じ血を引いてるとは思えないわね」
「引いてないからな」
「嘘っ!?」
「嘘だ。嬉しそうな顔をするな」
うぅん、二人が言い争いをするのは決定事項のようだ。険悪な雰囲気にはなっていないことが唯一の救いか。
「わたしはこいつの妹のスォンナ・アーリーだ。いつもはモンスターを退治することで金を稼いでいる」
「稼いだお金をお酒とタバコに注ぎ込むことは言わないの?」
「ほら見ろ。こんな女が近くにいるんだぞ。わたしが、人付き合いができずに捻くれたのは仕方のないことだ」
「あんたさっき真っ直ぐに育ったって言ってなかった?」
「わたしが真っ直ぐな人間に見えるか?」
「見えた人間には病院を勧めるわ」
「とまぁ、知り合って数日だが、わたし達のことは十分にわかってもらえたんじゃないかと思っている」
えぇ、十二分にわかりましたとも。わかったからこれ以上は、そのやり取りを抑えてもらいたいほどです。
「安心して欲しい。わたしが武器を向けるのはこいつだけだ」
「気をつけて、こいつ酒が切れると手が震えるんだから。背後を見せたら鎗で貫かれるかもしれないわ」
「適当なことを言うな。最近は震える手でも十分戦える」
妹さんの話を聞いていると、姉の方が相対的にまともに見えてくるのは…多分気のせいなんだろうな。
しかしこのままでは自己紹介、もとい彼女たちの会話だけでこの場は終わりになってしまう。とりあえず強引に話を切り替え、作戦を伝えることにしよう。
「まずはですね。洞窟での隊列ですが、お二人には前衛と後衛に別れてもらいます。ソレッティさんが前衛、スォンナさんが後衛です」
「あたしがこいつに背中を見せるの?」
「私も後衛に入ります。背後から襲いかかるようなら全力で止めますので」
「隙を見せなければ襲いかかることはしないさ」
「前衛は他にドリーさんと、ブレッドさんが努めます。順番は…」
一つ伝えれば何かしらやり取りが始まる。一々待っていればキリがない為、私たちは強引に話を進めることにするのだった。




