姉妹喧嘩の延長戦
「あの人たち、負傷してる?」
どうやらブレッドさんも私と同じ者に気がついたようだ。洞窟から現れた三人組、彼らの肌には幾つかの傷が刻まれていた。直近に刻まれた傷なのだろう。血が流れている。あれを放っておくのは気分が悪いな。
少しくらいなら助けになれるだろう。私たちは頷き合って互いの意思を確かめると、そのグループに駆け寄った。
「大丈夫ですかー!」
声をかけると、グループの中の一人がこちらに気がつき安堵の表情を浮かべた。私たちは簡単な挨拶を済ませると、一先ず怪我の治療にあたりだした。今はそれが最優先だ。
幸い傷は浅かった。包帯を巻いて安静にさえしていれば問題ないだろう。
「いやぁ助かったよ。ありがとう」
礼を言ったのは最初に私たちに気がついた青年だ。誰とでも友好な関係を気づけそうな、フレンドリーな雰囲気を感じる。
「俺はドリー・ランコイン、冒険者だ」
「城花です。あなたと同じ冒険者」
「同じく、ブレッド。まぁ、こんな洞窟にやってくるなんて、冒険者しかいないよね」
「ははっ、違いない」
小さく笑うドリーさん。治療をした残りの二人も今は口数が増えており、元気に何かを話していた。
「相変わらず足を引っ張るのだけは一流みたいね」
「あぁ。好きこそものの上手なれって言うだろ?」
何だろう。とても楽しそうだが、雰囲気はあまり良くない。この人たちに一緒にいたはずのドリーさんとは大違いだ。
「心の汚い人間は特技も汚いの?」
「そうみたいだな。鏡を用意しようか?」
意地でも顔を合わせず、それでも会話だけは途切れることがない。仕舞いには。
「斬り刻んであげるわアンタ」
「刺し貫いてやるよオマエ」
「あーあー、そこまでそこまで」
互いに武器を取り出す少女たちをドリーさんが制止した。まさかとは思うが。
「この傷の原因って」
「…半分は想像通りだ」
仲間割れかぁ。
珍しいことではない、とは思う。だが何というか、この二人のやり取りは独特だ。
私が今まで見たことがあるのは、本気で恨みを持つ人たちの殺し合いとか、モンスターによる精神操作などで戦わなければならない状況だとか。そういうものだ。
だがこの二人からは互いの敵意を感じるものの、命の奪い合いまではしないだろうと思う。だが武器は持ち出すし、ドリーさんの話を聞く限り洞窟から血を流して出てきたのもこの二人のせいだろう。
「あの二人はどれくらい互いを嫌ってるんです?」
「さぁ。姉妹だから本当は仲が良いと思うんだけどね」
「あ、姉妹なんですか」
ならあれは姉妹喧嘩の延長戦なのだろうか。随分と殺伐としているが。
「姉妹、かぁ」
あぁ、ブレッドさんが家族関係の言葉に反応している。何か、話題を切り替えないと。




