またパンかぁ
「もう一日だけ、呑みに行ってもいいですか」
荷物整理を終えた後、真剣な顔でシロカは言った。そんなにあそこの店が気に入ったのかと尋ねると、彼女は無言で頷く。
「まぁ、別にいいけど。今はお金に余裕があるし」
「本当ですか?」
ぱぁ、と花のような笑顔を浮かべるシロカ。そんなにお酒好きだったのかこの子。今まで呑んでいる姿を見たことがないからわからなかった。
「じゃあ今日の夕飯はそこで取ろうか。そこってご飯置いてる?」
「サンドウィッチならいただきましたけど」
またパンかぁ。
「あと、オムライスとか食べてる人いた気がします。メニュー読んでないでわからないですけど」
「あ、そりゃいいね。楽しみになってきた」
オムライスは好きだ。昔はよく、ご馳走として食べていた気がする。
腹ごなしにそこら辺を走り、汗を流して日が暮れた頃、シャワーを浴びてからバーへと向かう。そこは昨日と同じように薄暗く静かだ。何というか、大人な雰囲気を感じる。
カウンターに通され、せっかくだからとシロカにメニューの内容を伝えていく。一通りお酒の種類を伝えると彼女は顎に手を当てて少し考えた後、結局「昨日と同じものを」と注文した。この店にとっては外見が特徴的なシロカのことを、バーテンダーの人はよく覚えていたようだ。
「ブレッドさんは?何を頼むか、決めましたか」
「あぁ、うん。えぇと」
お酒はよくわからないし、そもそも頼めない。もう一度メニューにざっと目を通して目星をつけたものと、最初にシロカから聞いていたオムライスを注文した。
「ところで、お酒ってそんなに美味しいものなの?」
「飲んでみますか?」
「堂々と未成年に飲酒を勧めないでよ」
「冗談です。物にも寄りますが、お酒が美味しいってよりはお酒が好きがどうかによるかもしれませんね」
ふぅん、やはりよくわからない。将来お酒を飲んでみるまで、その味は楽しみにしておこう。
お酒と共に、料理はすぐにやってきた。チーズとハム、オレンジジュース。それとオムライスがやってきた。ソースはあまりかかっていなく、ライスの部分も白い。どうやらチキンライスではなくガーリックライスのようだ。珍しい。家庭内ならともかく、店でこの種類のオムライスを見たことはない。
ジュースとカクテルで乾杯すると、アタシはスプーンを手に取りそのオムライスを口にする。
その瞬間、脳にとある光景がフラッシュバックした。昔の記憶、アタシがまだ剣を握っていなかった頃の記憶が。
そんな記憶が脳味噌を一通り駆け巡り、アタシに平静が訪れた頃。この料理を出してくれたバーテンダーを捕まえてある質問を問いかけた。
「このオムライス、レシピはどうやって知ったんですか?」




