とにかく寝てね
「小さい女の子が来ませんでしたか?アタシよりも一回りくらい小さい子なんですけど」
「さぁ。うちには来てないと思うが」
回っていて気がついたが、子どもはあまり店に来ていないようだ。飲み屋街でも家族連れなどはいると思っていたが、最初に寄ったパンを食べた店以外で子どもを見ることはなかった。
それならば見た目は子どものシロカが目立つと思うのだけど、中々彼女の目撃情報を得ることが出来ない。すれ違いで宿に帰っているのか、それとも。
「一つの店に長居しているのか」
宿に帰っているのだとしたら、恐らく休んでいるのだろう。ここは一つの店に長居している可能性を考えて、引き続き店を回るとしよう。もしかしたら店に迷惑をかけている可能性もあったりするし。
店を数店巡ってシロカがいないか、シロカが来ていないかを確かめる。お洒落なところ、質素なところ、静かなところなど…。
そうして巡った最後の店で、見慣れた少女の姿を見つけた。大衆向けで騒がしいお店だった。
「シロカ」
少女はカウンターで、コップ片手に酔い潰れていた。バーテンダーの人も苦笑いしている。
「シロカ、戻るよ」
「んー。やだぁ」
いつもの敬語で会話するシロカとは大違いだ。駄々っ子のように甘える彼女を見ると、見た目の幼さ同様の人間のように思える。アタシよりも年上だけど。
「もう飲めないでしょ。いくよ」
「大丈夫だよぉ」
「大丈夫じゃない奴でしょ、それって」
酔い潰れた人間の言う台詞上位を聴きつつ、シロカの肩を担いで店を出ようとする。すると、後ろから背中を突かれた。バーテンの人だ。
「お代、いただけますか?」
代金の請求だった。
「ほら、ベッドだよ。シロカ」
「んんん」
お金を払い、シロカを担いで宿屋へと戻る。こんなにデロンデロンになった彼女を見るのは初めてだ。ベッドに下ろそうとすると、離れないようにギュッと抱きしめてくる。何だか愛おしい。
「まだ起きてますから。側にいてぇ」
「…仕方がないなぁ」
背中に腕を回すシロカと共にベッドに入ると、彼女は満足そうににんまりと笑い再びアタシに抱きついた。こんな輝くような笑顔を見せられると、探していたときの苦労なんて吹っ飛ばされるようだ。
「ほら、寝るよ。寝てる時に吐かないでね」
「ふふ、大丈夫ですよ。私はシルシの弟子ですよぉ」
「シルシってのが何がわからないけど、とにかく寝てね。側にはいるから」
「本当に?離れません?」
「離れないから、安心して」
「んふふ。やったぁ」
これはだいぶ酔っているな。幼児退行起こしているし、このまま見ている分には面白いけど、明日起きた時にどうなっているやら。
「私が寝るまで側にいてくださいねっ」
「はいはい。わかったから」
年の離れた妹がいればこんな感じなのかなと、密かに思いながらアタシはシロカを寝かせつけた。




