口に入ったら大変だ
山には奥へと続く道が整っていた。元から人が通っているのだろう、そこまで古くない足跡も残っている。このまま奥へと行ければ、意外とすんなり見つかるのだろうか。
しかし案の定、人が通れそうな道は途中で途切れていた。一応先に進めそうではあるが、道が細く一歩間違えば崖下に落ちてしまいそうだったり、膝丈くらいはある草が生え散らかったりしている。ここまで例の花が見当たらないということは、シンさんの言うようにもっと奥に生えているのだろう。
ならば進もう。幸い周りにモンスターの気配はない。これなら先へ進むことだけに集中できる。
狭い道を慎重に歩き、山の奥へと進んでいく。すると、十分ほど歩いただろうかその道に、唐突に色鮮やかな草花が絡み合っており、道を塞いでいた。
もしかして、ここにあの花があるのでは。そう思って一通り草花を見てみるが、シンさんの手紙に同封されていた絵の花は、私の記憶にある花は見当たらなかった。
仕方がない、斬って進むか。そう思って一つの花の茎を斬り裂いてみたところ毒々しい紫色の液体が噴き出した。地面に飛び散ったその液体を踏んでみるとぬめりがあり、体に良いものではなさそうだった。
燃やして進むことも考えたが、複数の草花が連結している状態を考慮すると、燃え移った炎により山火事が起きる可能性がある。やはり毒々しい液体に気をつけつつ、斬って進むのが無難だろう。
念のためハンカチで口を抑えて植物を斬り進んでいく。万が一にでも液体が口に入ったら大変だ。
飛び散る液体は地面を汚し、やがて赤色やら紫やらカラフルな道が出来上がっていく。これ次に来た人が見たらギョッとするぞ。
そう考えた時、ようやくブレッドさんを置いてきてしまったことに気がついた。後ろを見ても人影はないし、足音だって聞こえない。そもそも彼女はこの山に来てくれているのだろうか。
一度引き返そうか。いや、道は一本道じゃあなかった。すれ違う可能性を考えると、一度上まで登ってみた方が良いだろう。もし彼女が同じ道を通っているなら、このカラフルな地面で誰かがここを通ったのがわかるはずだ。
ブレッドさんには申し訳ないことをしたと心の内で謝りながら、私は再びハンカチを口に当てて前へ進み始めた。




