そんな安直な
ナタァカイセの花を探せ。そう言ってピクリとも動かなくなった老人を見て、私たちは薬屋のテントを出て行った。ブレッドさんにその花の名を問うてみたが、彼女はそんな花は知らないと首を横に振った。
「ってことは、その花は珍しい花ってことですか?」
「じゃないかなぁ。大体、知れ渡っている花が薬に伝わっているなら、あの薬の調合書が知れ渡っているわけじゃない?」
「確かに」
普通の人々が知らない特別な花に、特別な効果がある。そういう話は私の世界でも聞いたことがある。
だとすると手掛かり自体を探すのに苦労しそうだ。私たちはその花の色も形もわからない。名前だけでも知っていることが、唯一の救いだろうか。
「とりあえず行ってみようか」
「どこに?」
「花屋。そういうのは詳しそうじゃない?」
「そんな安直な」
だが私たち以上にその分野に詳しい人であることは違いない。聞いてみる価値はあるだろうと判断した私たちは、一先ず町の花屋を回ってみることにした。
「なた?知らないねぇ」
「聞いたことないですね。色とか形とかわかりませんか?」
「それよりもこの花買いませんか?」
三店舗回っても特に情報を得ることはなかった。良かったことと言えば、途中で買ったドライフラワーが綺麗だったことくらいか。
しかし、次はどこを探そうか。花屋がダメなら図鑑などがある本屋か、図書館か。それとも植物つながりで八百屋とか。他の薬屋とかを巡ってみるのも一つの手かもしれない。
手分けして情報を集めよう。私たちはそう決めて、夜まで一通り町を巡ることとした。
別れてから、最初は八百屋に行ったが花は専門外だと言われた。
本屋はブレッドさんに任せてある。私は文字が読めない。
ならば次は薬屋だ。向かう道中、もしかしたら他の薬屋もあんなテントの中にあるのかと思っていたが、普通の建物の中でお店は経営されていた。
内容を見ても変な色の液体などはなく、錠剤や粉薬などが置かれていた。少なくとも、あの薬屋の形式は一般的なものではないらしい。
「お薬をお探しですか?」
そうして商品を物色していると、店員が私のことを気にかけてくれた。
「いえ、花を探しているんです」
「花?それでしたらフラワーショップに向かった方が」
「花屋には向かいました。それでも見つからなかったので」
「そうですか。因みに、その花の名は?」
「ナタァカイセです。色や形はわかりません」
名前を告げたが、店員に心当たりはないようだ。指に顎を乗せて考える素振りを見せている。
「聞いたことはありませんね。薬屋に来たということは、何かお薬に使う花なんですか?」
「えぇ、この町にあるテントの薬屋から話を聞きまして」
「…テントの薬屋?」
店員は首を傾げた。先ほどまでとは異なりポカンとした表情だ。まさか、あのテントの薬屋は知られていないのだろうか。あれだけ目立っていて、利用客だっているのに。
私の考えは当たっており、店員はテントの薬屋については何も知らないと答えた。花の情報も得ることができなかった私は、次に向かう場所を考えるため、公園のベンチに座るのだった。




