効きました。引くぐらいに
「何なんだろうね、そのお婆さんって」
薬を飲んでから咳も減り、元気になったブレッドさんと共に、私は昨日行った薬屋へと向かっていた。
小瓶の中身を飲んだ私たちは疲れが吹き飛んでおり、どこまででも走ることができそうなほど足が軽くなっていた。変な物質が入っていないか、それだけが心配だ。
「それにしても、すごい効き目だよね」
「薬ですか?」
「うん。アタシ達はあの液体を怖がってたけどさ。もしかしてただ単純に凄い調剤師だったんじゃないかな」
「そんなものですかねぇ」
あれがただの薬だとは思えないが。
と言っても、何なのかというのも見当がつかない。モンスターの生き血?特別な植物の汁?
どっちにしても、私が知らない液体であることは変わりはない。それを知る恐怖心と好奇心では、好奇の気持ちが勝った。
「それで、その薬屋さんってどこにあるの?」
「あれです」
ちょうど視界に入ったそのテントを指さした。建物からは相変わらず謎の煙が立ち昇っている。それを見たブレッドさんは一言、確かにあれは怪しいと呟いた。
「お邪魔しますよ」
一声だけかけて、私たち二人はテントの中に入る。煙が出ているだけあって、中の空気はなんというか濁っている。恐らく試験官の中のボコボコ液体が原因だろう。
老人は昨日と同じように水晶玉を乗せたテーブルの前で座っている。
「おやおや。昨日の」
「貴方の薬、効きました。引くぐらいに」
「そうだろうそうだろう。ワタシの薬はよく効くと評判なんだ」
老人はひっひっひと笑い出す。その老人を、ブレッドさんは目を見開いて見ていた。どうやら私と同じで、こんな笑い方をする人間を初めて見つけたのだろう。
「それで、今日は何の用だい」
「あの薬について聞きたくて。材料とか、調合の方法とか」
「それは教えられないよ。企業秘密って奴さ」
「ですがあれの効き目は異常ですよ。気になっても仕方がないでしょう」
この人の瞳を見る限り、特別嘘や偽りなどは話していないようだが、それでも薬の内容が気になる。これは先ほど感じた好奇心というものだ。
老人はピクリとも動かなくなった。企業秘密のため、ひたすらに黙っているのだろうか。
もう一度問いかけてみよう。そう思い身を乗り出した時、一文字に結ばれていた老人の口が開いた。
「ナタァカイセの花を探しな」
「…え、なたーかいせ?」
「そう。それが、ワタシの出せるヒントさ」
老人は再び動かなくなった。まるでゼンマイが切れたカラクリ人形のようだ。
しかし、わざわざ企業秘密とやらを教えて貰ったのだ。その何とかの花、探してみようじゃないか。あの薬が特に変なものが入っていない、純粋な薬だとするなら今後役に立つかもしれない。




