一体何の挑戦だ
「具合悪いぃぃ」
町に着く頃、ブレッドさんは風邪に悩まされていた。道中に風邪をひいた私と一緒にいたせいで移してしまったのだろう。最初に危惧していた出来事が現実となってしまった。申し訳ない。
「頑張りましょう。ほら、町には着きましたから」
「シロカぁ。おぶってえ」
「おぶりますおぶります」
実際におぶって歩くとなると大変だった。やはり自分よりも体格の大きい人を背負うというのは無理があったか。
そうは言っても一度引き受けた以上、やっぱり無理でした、と言うのは何だか気が引ける。まずは宿屋に行ってブレッドさんを休ませるとしよう。
…しかし、宿屋はどこだろう。それらしい建物を見つけることができない。まさか、宿屋がないとか。
町の地図さえあればと思ったが、未だに私はこの世界の字が読めない。こうなったら。
「すみません、ちょっとお時間いただけますか?」
聞き込みをするか。
風邪引いた人を背負っているのに声をかけるというのは若干抵抗があったが、こっちもなりふり構っていられない。でもできるだけ体力がありそうな人に声をかけて行こう。
そうして数人に話しかけていくうちに、宿屋はあるが小さい建物だということがわかった。そのため急がないと宿泊できるかどうかも怪しいとのことだ。
情報を元に宿屋の場所へ向かうと、そこには人の良さそうなおばさんが受付をしていた。話をするとすぐに部屋を手配してくれたばかりか、薬まで用意してくれた。見た目通り良い人だった。
「薬と水、置いておきますからね」
「助かります」
いただいた薬をブレッドさんに飲ませ、一度私はベッドに座る。さて、これからどうしよう。とりあえずブレッドさんに効きそうな薬を買って、食べ物を用意して。
これは買い物に出かけた方が良さそうだな。束の間の休憩を行った後、私は宿屋を後にした。
先程は宿屋探しに意識が向いていたためか、町を歩くと新鮮な景色が広がっていた。どうやらこの町は外食が盛んな場所なのだろう。様々な料理屋が至るところに並んでいた。
テイクアウトもやっているようなので、いくつかブレッドさんに買って帰るのも良いだろう。サンドイッチとかなら食べられそうな気がする。
とはいえ、まずは薬が先決だ。薬屋はどこだろうか。薬、薬…。
「まさか、あれか?」
いかにも怪しげな、夜色のテントが一つ。何故か入り口の隙間から紫色の煙が出ている。
いやいや、薬屋というより占い師の家。呪術師とかがいそうだ。ないだろ、ありえない。
そう思っていると、テントから一人の女性が出てきた。紙袋を抱えている。
「いやぁ。ここの薬屋はよく効くんだよなぁ」
何故か大きく独り言を言っていた。
何だ。私の考えでも読まれているのか。一体何の挑戦だ。
だが、いいだろう。これが罠だというのならば、正面から堂々と引っかかってやる。




