もっと私を知ってほしいんです
誤字報告ありがとうございます!
やばい書いてて見直して全然気付かなかった…。
「体調はどうだい?」
風邪を引き始めてから三日ほど経った。最初の頃より状態は良くなってきたが、未だに頭が重いのが難点だ。この世界の風邪は長引くのだろうか。
「中々治りませんね。大分楽にはなりましたが」
「無理はしないでよ。ほら、ご飯作ったから食べなよ」
「あれですか」
ブレッドさんが鍋を抱えてやってくる。その中には少しだけ黒くなったお粥があった。野菜の緑でも、卵の黄色でもなく、白と黒だけのお粥が。
もちろん風邪で動けない私に代わって料理を作ってくれるのはとてもありがたいことだ。だがこうして三日三食ずっと同じもの、同じ味のものを食べるとなると…。
「大牙さんの料理って美味しかったんだなぁ」
「え、なに。タイガー?モンスターの名前?」
「人の名前です」
こういう聞き間違いはお互いに度々発生する。言葉が同じで、共通の単語があるから稀に固有名詞の話になるとすれ違いが起きるのだ。
「へぇ。シロカが人の話をするなんて珍しいね」
「そうですか?あ、そうかもしれませんね」
「聞いても良いかな、そのタイガーさんってどんな人?」
「大牙さんです。彼は不器用ですけど、優しい人でしたよ。私の剣と魔法の師匠でもあります」
ワンツーマンで何かを教えられたことは少なく、「走れ」や「本を読め」しか言われていなかった気がするが。
とはいえ彼に言われた通りに過ごしていれば強くなれたのは事実だ。何せ旅を始めた時はひ弱だった私が、一人でモンスターと戦い合えるようになったのだから。
「あとはそうですね、料理上手でした。私たちも料理はしましたが、彼ほど上手くは行きませんでしたね」
「私たちって?」
「ん、あぁ。ニアンダの時にお話しした隣人です」
「あ、ごめん」
触れてはいけない話題だと思ったのだろうか。ブレッドさんはそこで話を止めてしまった。彼女にはその隣人が死んでしまったということを話したしな。
気にしていないと言ったら嘘になる。私にとって、その隣人はとても大切な人だったから。だが。
「謝ることなんてないですよ」
「でもさ」
「ブレッドさんが言うように、私が自分の知り合いの話をするなんて珍しいんです。それを自分から話すってことは、貴女にもっと私を知ってほしいんです」
…。
あれ。何だか言っていて恥ずかしくなってきた。この顔の熱さは、恐らく風邪のそれじゃあない。
「それって」
「疲れました。寝ます。お休み」
寝袋をガバリと被り、今度は私が話題を打ち切った。
人が寝ようとしている間、ブレッドさんはしつこく私が言った言葉の意味を聞こうとちょっかいをかけてきた。非常に鬱陶しかったし、非常に恥ずかしかった。




