耳タコです
「あれ?」
一眠りしたつもりだったが、夢はまだ続いていた。まるで現実を忘れろとでもいうように。
「どうしたの?」
「うぅん。私、風邪で寝込んで…」
「何言ってるの、ワタシたちはこれから洞窟のモンスターを倒しにいくんだよ?」
「そうだったっけ、そうだったかも」
懐かしいやり取りだ。こういう隙を見せると、すぐに大牙さんが指摘してくるんだ。
「寝ぼけるのはいいが、足手まといにはなるなよ」
そう、こんなふうに。
「わかっています。私、もう半人前じゃありません」
「一人前でもないだろうが」
「えぇと、四分の三人前でどうですか」
「意味がわからん。やっぱりお前は半人前だ」
それ以上彼は話を続けなかった。炎の魔法をランプ代わりにドンドン前に進んでいく。だが時々後ろを振り向いて私たちの顔を見てくれる。やはり、彼は優しい人だ。
洞窟の奥に進むほど、足音以外の音が聞こえてくる。それはモンスターの声だったり、彼らが唱える魔法の音だったり。時には戦い、時には見つからないようにしてその中を進んでいった。判断を下すのは大牙さん、そして活躍するのは印だ。私はといえば、二人の様子を見て時折戦闘に参加するだけ。それが一番合理的だということはわかっている。戦いは遊びじゃない。一歩間違えばここにいる仲間全員が死ぬんだ。
死んだら終わりなんだ。
「大分進んだな」
骸骨剣士を粉々に砕いた大牙さんは汗を拭きながら呟いた。事前に渡された地図を参考にするとこの先は描かれていない。ここから先は地図を描いて帰れないくらい危険なところだということだ。
「城花」
「何です?」
「お前は最後尾でひたすらに後ろを警戒しろ。異変を感じたら俺たちに伝えろ。間違っても自分だけで解決しようとするなよ」
「わかりました。要はいつもと同じですね」
「馬鹿は役目を与えておかないと勝手な行動を起こすからな」
「耳タコです」
このメンバーで旅を始めた時から何度も言われた言葉だ。そう言えば、以前無視して勝手な行動を取ったことがあったっけ。あの時は本当に馬鹿なことをしたと反省している。
「ふん。馬鹿は同じ過ちを二度繰り返すからな」
しまった、覚えられていた。何だか恥ずかしい。
「とにかくだ。お前は自分にできることをしろ。自分を過大評価するなよ」
「わかってます。四分の三人前であることは自覚してますし」
「よくわからんことを言う」
久しぶりに大牙さんが笑顔を見せた。本人は意識していないだろうが、それはそれで嬉しいものがあった。




