自分の心を
「さて、と」
シロカやダリダたちと囲んで食卓を囲んだあと、アタシはステータスウィンドウを開いて所持金を確認した。昨日が長い一日だったので頭から抜けそうになっていたが、今のアタシたちにあまりお金はない。シロカに聞いた話だと既にモンスター討伐の依頼は済んでいるとのことだったので、あとはギルドに達成報告をするだけだ。
とは言ったものの、それだけでは旅費の資金にはまだ足りない。まだしばらくはこの町で金を稼ぐことになりそうだ。
「ブレッド、ちょっと」
次の場所へ行くための金額を計算していると、ダリダがこっそりとアタシに耳打ちをしてきた。こそこそとした雰囲気を察するにどうやら内緒の話があるみたいだ。シロカの方を見ると、彼女はニアンダと何かを話している。アタシは連れてかれるがままダリダの部屋へと入っていった。恐らく元々父親が使っていたのであろうその部屋は、最低限の家具しかない質素な部屋だった。
「一応、例の質問って奴を聞いておこうと思って」
「質問?」
「自分が忘れてどうするの。ニアンダを探し始める時に話したでしょ。手伝う条件として、一つ質問させてもらえればいいって」
あぁ。確かにそう話した。質問というのはニアンダ探しの時に既に聞いていたことのため、個人的に満足してしまっていた。
「それで、質問って何?」
「ダリダの家族観について聞こうと思ったんだよ。妹のことをどう思っているのかなってさ」
「それって」
「うん。前にダリダが教えてくれたこと。血は繋がってなくても大切な人間なんだよね」
そう聞いたとき、アタシは心のどこかで自分の母にダリダのような心があることを祈っていた。実際はきっと、ないんだろうな。大事に思ってくれていたのなら、どんな理由があったとしても捨てるとは思えないし。
「ねぇ」
アタシが一人で考え事をしていると、ダリダは神妙な顔で話を続ける。
「そんなことを聞くってことはだよ。もしかしてあんたも、何か悩みを抱えてる?」
「…鋭いことで」
「わかるもの、な気がするよ。今の今まで気づかなかったけど」
同じ悩みを持つもの同士、ということだろうか。アタシにはダリダの気持ちを理解することは難しかったが。
「聞いてもいいかな。何でそういうことを聞きたいって思ったのか」
ダリダとはここまで協力したことで、絆のようなものもある。それにアタシが抱えている悩みは、絶対に隠したいなどと考えているものじゃあ、ない。
そう考えたアタシはダリダに自分の心を告げた。
「アタシさ、親に捨てられたんだ」
だが、このことを話した人は少ない。話を切り出してから、少しむず痒い気持ちになるのだった。




