アタシのおかげかな
窓から入ってきた日差しに包まれて目が覚める。隣を見るとシロカはもういなかった。視線を外へ動かすと、彼女は剣の素振りを行なっていた。そういえばだいぶ前の街でも早朝に起きて訓練をしていたっけ。あれももうだいぶ前のことだと懐かしさを感じながら、アタシは外にいるシロカの元へと駆け寄った。
「おっす。早起きだね」
「おはようございます。ブレッドさん」
シロカはアタシを見かけるとその手を止めてニコリと笑った。
「少々気分が良いものでして」
「それはもしかして、アタシのおかげかな?」
「さぁ、どうでしょう」
シロカは小さく笑い声を出すと、握っていた剣をアタシに見せつけるようにして素振りに誘ってきた。
「それよりこれ、一緒にやりませんか?」
「んー。遠慮しておく。それよりみんなの分の朝ごはん用意しようかなって」
その一言で先ほどまで笑顔だったシロカの顔が一瞬で曇ってしまった。
「何でそんなに料理に対して積極的なんですか。私も行きます。というより私がやります」
慌てて剣を鞘にしまい、軽く汗を拭くとアタシを追い越して家へと向かって行った。昨日も思ったが、そこまでアタシの料理が嫌か。
ならば、と一つの提案をシロカに持ちかけた。
「せっかくなんだから、二人で作らない?」
「二人で?」
手を洗い、まな板と食材を用意したシロカはアタシの提案にむむむと唸る。
「確かに私が指揮できれば酷い惨状を見なくて済むか…」
「酷い惨状って?」
「大地の味を感じなくて済みそうってことです」
何だそれ。料理なんて食材を用意して記憶にあるレシピを元に調理するだけなのに。
「それでは野菜を切ってもらえますか?味付けは私がやりますから」
「はいはい」
そうして調理をシロカに任せていると、次第に良い匂いがアタシの鼻腔をくすぐった。彼女は料理が苦手だと言っていたが、こうして見る分には十分に上手だ。
そして良い匂いが上の階にいる姉を起こしたのか、バタバタと大きな音をたてながら階段を降りてきた。
「お、ダリダ。おはよう」
「ご、ごめん!客人にご飯を用意させるような真似をして!」
「あぁ、気にしなくていいですよ。私たちもたまたま早く起きただけですから」
「でも!普通こういうのは家主の役目!」
そう言ってダリダは無理やりにでもシロカからおたまを奪おうとする。何だかこの二人似ているなぁ。自分の役割を決めつけて、それを譲らないところとか。
そうしてバタバタしながらも、ニアンダちゃんが起きる頃には朝食は完成していた。結局アタシはほとんど関わらなかった朝食にアタシは舌鼓を打つのであった。




