二人の姉妹
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完全に日が暮れた。街灯以外の光がなく、今まで集合場所として使っていた路地裏ではお互いの顔が見えないため、アタシたちは公園にあるベンチまで移動していた。
「全っ然、見つかんない!」
人がいなくて本当に良かった。こんなに大きな声を出したら迷惑になっていただろう。
とはいえダリダが大声を出したくなるのもわかる。町中をくまなく探しての結果がこれなのだ。誘拐や事故を疑いたくなる。隣に座っているこの姉は気が気でないだろう。
「こうなったらもう一回ギルドに。あ、お金用意しないと」
「…まぁ、確かにこんな状況なら少しでも人手が欲しいもんね」
初めて会った時の狂犬のような彼女ならともかく、今の状態ならちゃんと依頼ができるはずだ。それに妹の特徴を聞いたのだから、アタシがサポートに入ることもできる。
アタシだけの力で何とかできなかったのは申し訳ないが、見つからない以上仕方がない。アタシからも少しだけ報酬金を出すことにしようか。そう思いつつ二人でギルドに戻ってくると、アタシを見た受付嬢がこちらへと歩いてきた。
一体何だろうかと用件を聞いてみると、その話の内容は一筋の希望だった。
「ダリダ、行こう!」
「は?ギルドには来てるでしょ?」
「違う!ダリダの家だよ!」
──街の外で迷子の女の子を見つけました。家まで送っておきます。
受付嬢から聞いたのはシロカという少女から頼まれたらしい伝言だ。その内容をダリダに伝えると、彼女は一日中走り回っていたにも関わらずものすごいスピードで走り出した。
ダリダを追いかけること数分。彼女は一軒家の前で立ち止まっていた。恐らく彼女の家なのだろう。ダリダは家の明かりがついていることを見て安堵の表情を浮かべると、猪のように家の中へ突進していった。
「ちょっと、ダリダ!?」
慌ててアタシも追いかける。そして扉を開けた途端、聞こえてきたのは肌を叩く乾いた音だった。視界が捕らえたのは、小さな女の子を叩いたダリダと、その横で驚いた顔をしているアタシの相棒だ。
ダリダは荒くした息を整えると、今度は両手を広げてギュッと少女を抱きしめた。
「馬鹿!」
大きな声で叫ぶ。
「わたしがどんだけ心配したと思ってんの!ニアがいなくなったら、わたし、わたし…!」
段々と声が弱く、震えたものになっていく。
そうして彼女は溜まった感情を涙に流しながら、ニアンダを強く抱きしめた。ここは二人にした方が良いだろうな、と思ったアタシはシロカを連れて外に出る。
「えっと、あれがニアンダのお姉さんなんです?」
放っておいて大丈夫なのか、とでも言いたげな顔でシロカはアタシを見たが、アタシは手をぷらぷらと振って軽く受け流した。
「大丈夫だよ。ダリダは妹想いみたいだからさ」
「でも、出会ってそうそう妹を叩きましたよ。一応彼女たちの家庭事情は聞いてますが…」
「大丈夫なんだって。何なら、少しだけ中を覗いてみる?」
アタシの問いに無言の肯定を示したシロカがそっと扉を開けると、そこには二人の姉妹がお互いに泣きながら抱きしめあう光景が広がっていた。
シロカの肩越しにその光景を見て、アタシは密かに、自分の母親に期待を抱いてしまう。もしかしたらアタシの母も、ああやってアタシを抱きしめたいのではないのかと。




