家族と呼べるような人なら
「私も血の繋がった家族はいません。随分と昔に亡くなってしまいました」
あれは確か私が六つの頃だっただろうか。村を襲ってきたモンスターに私の家族は殺された。家族が必死に隠してくれたお陰で私一人が生き残った。どこにでもある話だ。
悲しいことに幼い記憶とは薄れるもので、今では両親の顔すらぼんやりしている。もし死後の世界とやらがあるとするなら、私は両親に怒られるだろう。
「でも、家族と呼べるような人ならいますよ」
「それって、あたしみたいに」
「ちょっと違うかもしれませんね。私の場合は隣人が家族のように接してくれました。その人がいなければ、恐らく今の私はないでしょうね」
私の人生に影響を与えた人をあげるのならば、真っ先にその隣人の名前を出すだろう。それだけ私はその隣人を──彼女を大事に思っていた。
「まぁ何が言いたいかというと、血の繋がりがなくても家族のような存在はできますよ。ってことです」
「でも、それはお姉さんのお隣さんが優しかったからでしょ」
「はい、そうです。ではニアンダさんのお姉さんは優しくないのですか?」
そう言うとニアンダはしばらく黙り込んだ。この少女がいつ両親を亡くしたのかはわからないが、両親が亡くなってから姉妹二人で生活してきたのは事実だ。
「お姉ちゃんが優しいことなんて、わかってる」
「だからこそ、重りになりたくないと?」
少女はこくんと頷いた。
やはりこの子は昔の私にどこかが似ている。それならば人生の先輩として、間違った道に進まないように助けなければならない。
「なら、自分が軽くなるしかないですね」
「軽く、なる?」
「単純な話ですよ。姉の重りにならないようにすれば良いんです。そうすれば姉も楽になるし、貴女も負い目を感じずに済む。一石二鳥って奴ですね」
「単純かもしれないけど」
「そうですね。単純、だけど難しいことだと思います。私も一度それで失敗していますしね」
失敗の内容はできれば話したくない。私にとって、あの出来事は中々刺激的なことだったからだ。忘れるわけにはいかないが、自分からは話すことはないだろう。
「…何をすればいいのかな」
「それは本来貴女が考えるべき、なのかもしれませんが」
「そうですね」と顎に手を添えて少し考える。せめて一言、二言だけでもこの少女に助言したい。
「お姉さんのためにも、とりあえずは自分の体を一番大事にすべきですかね」
そう言って私はニアンダの足首に手を触れた。ハンカチには少しだけ血が滲んでいる。
「もう無茶しちゃダメですよ」
そう言うと、少女は小さく頷いた。




