ドンと来い
───
「これで良し、と」
治癒魔法の効果が縫い込まれたハンカチを少女の足首に巻きつけてギュッと結ぶ。ハング・アーからもらったプレゼントが役に立った。あいつがこのことを知れば、あの吹き出物だらけの顔をグニャリと歪めて笑うに違いない。
一先ず少女を樹の下に座らせ、休ませることにした。依頼は達成していないが、小さな子どもが怪我をしているのに放っておくほど私は悪魔ではない。このまま帰還するにしても、ブレッドさんなら事情を話せば理解してもらえるだろう。
さて、と。ただただこうして座っているだけなのも退屈だ。どれくらいの間一緒にいることになるかはわからないし、ここは暇つぶしに自己紹介でもしておくべきだろう。
「私は城花、貴女は?」
「…?あ、名前。えと、ニアンダです」
ニアンダと名乗る少女はぺこりと頭を下げた。礼儀正しい子どもだ。もしかしたら良いとこの生まれなのかもしれないな。私が感心していると、今度は少女の方から私に問いかけてきた。
「えぇと、お姉さんは」
「はい?」
「ここで何をしてたの?」
「ん?あぁ。私はモンスター討伐をしてたんです」
お金稼ぎのために。という言葉は飲み込んでおいた。少女の表情が浮かないものだということに気がついたからだ。
「そっか」
ニアンダは一度そう呟くと、それ以上は何も言わなくなった。小さい女の子が怪我をしてでも森の奥に、それも一人でやってきたことには、もしかしたらそれ相応の理由があったのかも知れない。それを聞くのは野暮というものかもしれないが…。
「何か、悩み事ですか?」
どうにか、聞き出してみたかった。
冷やかしなどではなく、何故か私ならその悩みを解決できる気がしたから。
「大丈夫。私なんてほら、他人ですよ。どんなに恥ずかしい話だろうと人に言いふらしたりはしません。ドンと来い」
「…」
両手を広げる私とは対照的に、ニアンダは怪我した足を引きずってでも私との距離を空けた。おかしいな、人生でトップ5に入るくらいはフレンドリーに接したのに。
その後は迫れば迫るほど彼女との距離が空くのがわかったので、逆にこちらから相手の出方を待つことにした。押してダメなら何とやらという奴だ。
その作戦が上手くいったのかどうかはわからないが、やがてニアンダは口を開いた。恐る恐る、自分は正しいのかを確かめるかのように。
「あの、お姉さん」
「何です?」
「家族を辞めたいって、思ったことってある?」




