ノスタルジックに浸って
───
「ふぅ」
町から少し離れた林の中で。私は草木に囲まれながら、愛剣を地に刺して一つ息を吐いた。
ブレッドさんが受注してくれた魔物討伐の依頼は、特段難しいものではなかった。一人でも十分に戦えるような人型の獣を二十体討伐、時間はかかるだろうが確実に達成できる依頼だった。
開始十五分で現在の討伐数は七体。このペースだとあと一時間もしないうちに達成できるだろう。余裕があることを確かめた私は、木陰に座り一休みすることにした。
一度大きく深呼吸。澄んだ空気が肺に入っていくことを感じる。綺麗な空気と心地の良い暖かさについつい微睡んでしまうほどだ。流石に寝入るわけにはいかないと、必死に脳を動かすことにした。
そういえば、と思う。私がこの世界に来て、もうそろそろ一月が経つ。慣れないことで戸惑ってばかりだったが……思い出を振り返り、良いことの方が多かったなと、そう感じた。
──だが、やはり。
──帰らなければ。
例え帰りを待つ者が居なくても、私はあの世界でやらなければならないことがある。例えそのことに意味がなくとも…。
「きゃっ」
少しノスタルジックに浸っていると、茂みがガサガサと揺れる音がした。同時に女の子の声も。ということは、あれはモンスターではなくて…。
結論が出るより先に体が動いた。床に挿していた剣を強引に引き抜き、構えながらも音の場所へと駆けつけた。そこにいたのは。
「ひゃっ!?」
足を抑えた少女だった。
身長は小さめ、ざっと見る限り私より一回りは小さい。その少女は私を見て恐怖の表情を浮かべたが、次第にその表情は控えめになっていった。
「人?」
「モンスターに見えますか?」
「でも、さっきまで」
少女が何かを言おうとしたが、それを遮ったのはモンスターの咆哮だ。そんなに大きな声ではなく複数の声が聞こえないことを考えると、小型か中型のモンスターが一匹だけ近くにいるのだろう。狙いは恐らく、この少女だ。捕食対象にでも選んだか。
「動けます?…いや、聞くだけ無駄でしたね」
少女の足が痛々しく赤くなっている。挫いたか、それとも捻ったか。どちらにしても、この状態で小さい女の子に自力で歩けというのは悪魔くらいだろう。
「抱えます。暴れないでくださいね?」
「え」
答えを待たずに小脇に少女を抱えて走り出した。逃げるわけではない、見渡しのいい場所へと誘き寄せるためだ。その目的はただ一つ。
ここで、そのモンスターを倒すためだ。




