家族、か
前回冒頭の『───』より視点が変わっております。今回の章では頻繁に視点が変わるかもしれないので、よろしくお願い致します。
先ほどまでギルドで騒いでいた少女は、人に見られていると知るや否や静かになり、アタシにされるがままに路地裏まで連れてこられてしまう。だが二人きりになった途端、彼女は受付嬢に迫っていたときの表情へ戻っていた。
「…それで、何。わたしに何か用?」
「用も何も、あんな状態じゃ誰も話聞いてくれないでしょ。だから落ち着きなさいって言いに来たわけ」
「余計なお世話なんだけど」
「そ。落ち着いたんならそれでいいけど」
こんなところまで連れてきて悪かったね、そう言ってアタシはその場を立ち去ろうとした。しかし。
「待って」
つい先ほどアタシがしたように、ガシッと肩を掴まれてしまった。
「その、さっきはわたしの方が悪かった。だから手伝ってほしい」
「手伝うって、迷子探し?」
「そう、妹。…家族なんだ」
その言葉を聞いた瞬間、アタシの体がビクンと跳ねた。
家族。
それはアタシにとって、記憶はあるけど存在しないもの。…まさかこんな言葉一つで激しく動揺することになるなんて。家族という言葉になんて憎しみしか感じていないと思っていたのだが、どうやらまだ、アタシは家族という存在に憧れを抱いているらしい。
きっとアタシを捨てた母も、アタシに空いたがっていると。
「そうなんだ。家族、か」
「頼む。お金はその、あんまりないけど」
「いいよ。その妹が見つかったら質問させてもらえれば」
「質問?」
首を傾げる彼女を無視して、アタシは強引に話を進めた。
「それじゃあ、早速探そうか。情報が欲しいな。その子の特徴とか、名前とか」
そこまで話してから、アタシ達は自己紹介をしていないことに気がついた。これから協力する仲なんだ。関係は少しでも円滑にしておいた方が良い。
「アタシはブレッド・ツインバード、あんたは?」
「あ?…あぁ、名前か。ダリダ・ユゥ。妹は二アンダ・ユゥ」
「そう。ダリダ、ね。じゃあ妹さんの特徴を教えてもらおうか」
話を伺うと、妹の二アンダは十歳前後で背は小さめ。ダリダと同じく栗色の髪を二つに束ねており、性格はおとなしい娘とのことだ。
ニアンダはダリダが食材の買い出しに出かけて家に戻ると、彼女は家にいなかったらしい。外へ遊びに行ったのではないかと聞いてみたが、外で活発に遊ぶような子じゃあないし、一緒に遊ぶような友達もダリダは知らないと言っていた。
「もちろん、わたしが知らないだけで友達だっているかもしれないけど」
「うん、わかってる。それじゃあまずは町をしらみつぶしに探そうか。二アンダがよく行くところとかは探したんだよね?」
「あぁ。といっても、あの子が行きそうなところって言ったらこの町の小さな図書館だから、そこしか行ってないけど」
「つまりまだまだ探すあてはあるってことだ。わかった、じゃあとりあえず、二時間後にここでまた会おうか」
できればシロカにも協力してほしいところだが、いかんせん連絡を取る手段がない。もし早く帰ってきた時のためにギルドの伝言板に書き込みを行い、アタシは例の二アンダちゃんを探しに出かけた。




