お金がなくなりました
「シロカ。大切な話があります」
旅の道中、立ち寄った町のレストランにて。向かいにあるブレッドさんはやけに穏やかな笑顔でそう切り出した。
「え、何です。怖くて先を聞きたくないんですけど」
「お金がなくなりました」
「一大事じゃないですか」
思ったよりも深刻なお話だった。こちらの世界に来てからというもの、金銭の管理は彼女に任せており、自分は全く把握していなかった。
「ちなみに要因は?」
「ここ数日、あんまり纏めたお金稼ぎをしてません。モンスターの素材を売って小銭を集めていただけです」
「確かに」
この世界ではモンスターを倒して泡のように消滅させると、最後に攻撃を喰らわせた人物のあいてむぼっくすに、そのモンスターに関連する素材が格納されていくらしい。例えば牙だとか、骨だとか。
それらの道具はお店にて少額で買い取ってもらうことができたため、しばらくそれを売って過ごしてきた。言われてみれば最初に訪れた街以降、ギルドの依頼というのを受けていなかったように思える。
「それに加えて、前回の祭りでの散財」
「あぁ、あれは」
確かに二日目の夜、私はもやもやした気持ちを誤魔化すために色々なものを買っていたかもしれない。一度開封したきり使っていない子供向けのおもちゃとか、珍しい味付け(美味しい訳ではない、寧ろ…)な食べ物だとか。
「故に、アタシたちのお金はここで食事を取ったらほぼなくなります」
「つまり?」
「この町でお金を稼ぎます」
まぁ、そうなるだろう。このレストランに寄る途中にギルドを見かけたし、わざわざひもじい生活を強制することもあるまい。少なくとも、今日の宿代くらいは稼ぎたいところだ。
「それで、だ」
ブレッドさんは水を一口含み、少しの間を開ける。
「二つの依頼を受けて一人ずつでこなしていこうよ。内容にもよるだろうけど、そうすれば早くお金稼げるしさ」
「ですが私、まだ文字書けませんよ?依頼受けるときとか達成報告する時とか、書類を書かなきゃいけないはずですよね」
「それくらいちょーっと遅れても大丈夫だって。それじゃ、これ食べたらギルドに行こうか」
そう言ったブレッドさんは、大口を開けてスパゲティを頬張った。気合の入った食事だ。下手したらしばらく食事が食べられないかもしれないのだから、そんな食べ方になるのも仕方ないのだろう。私も負けじと残っていたパンにかぶり付いた。




