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異世界勇者の人助け  作者: 鳥羽こたつ
3.5章
49/125

彼女の目標も

「『彼女は我々に語る。我々のために語る』だね」


例の神話の本を借りて、とりあえず前後の文章だけブレッドさんに読んでもらった。彼女が言うにはそう書いているらしい。

私が読めた文字を語っていたのが誰なのかを聞いてみると、そこまではわからないらしい。というのも、このページには代名詞でしか書かれていないとのことだ。


「まぁ、読み込んでみればわかるとは思うけど。こういう本ってアタシの管轄外だしなぁ」

「そうだ、それなら私に文字とか文法を教えてもらえませんか?」

「え、アタシが人に教えるの?」

「いけませんか?」

「向いてないんだよねぇ」


ブレッドさんは腕を組み、困った表情を浮かべながら唸り出した。彼女から物事を教わったのはすてーたすうぃんどうの開き方くらいだったか。あれは私が異世界人だということを知らなかったのもあるが、確かに「やってみればわかるでしょ」系の教え方ではあったように思える。感覚で物事を伝えるタイプなのだろうか。


「とにかくだ。ここの図書館は街の外に本を持ち出して良いみたいだし、気長にでいいなら読み進めていくよ」

「それは助かります。ありがとうございます!」


これで私の目的に関する情報が少しでも手に入るかもしれない。そう思うと、自然と声が弾んだ。

っと、私ばかりが喜んでいるわけにもいかない。これだけ人がいるのであれば、目の前の彼女の目標も達成できるかもしれないんだ。


「ところで、ブレッドさんの方はどうなんです。お母さんに関する情報とかって手に入りました?」

「ん。いや、全然」

「…そもそも何ですけど、探してますか。前の村は一度来たことがあると言ってたので、そんなものなのかと思ってたんですけど」

「ま、ぼちぼちね。旅の目的というより人生の目的だからさ。焦らず探しに行こうと思ってるわけよ」

「…貴女がそういうのであれば、それで」


彼女自身がそうしたいと言うのであれば、私が口出しすることはできまい。恐らく本音としては、自分を捨てた母親と対面する恐怖などもあるのかもしれないが──そんな気持ちを勝手に想像するのも何だか悪い気がするので、私はこのことについて考えるのをやめた。

その日の夜にもう一度祭りへ赴き、楽しんでいたはずなのだが…。私は何故か、昨日と異なり心の底からその感情を感じることはできなかった。

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