今、楽しいです!
「あ、シロカ。そっちはどうだった?」
誕生の置物を買って再び祭りをぶらぶらしていると、たまたま先ほど別れたブレッドさんと鉢合わせた。
「こんなの買いました」
「何それ。ガラクタ?」
これ売ってた人が聞いたら泣くぞ。
「あるテーマに則って出来上がった木彫り細工です。わかります?」
「ガラクタじゃないの?」
「あなた頭使ってないでしょう」
「いや、全然わからない。ちっとも」
テーマは誕生だ、と伝えると彼女は余計にわからなさそうな顔をした。この話はここで終わりにした方が良さそうだ。
話題を変えて、今度はブレッドさんがどこを見回っていたのかを聞いてみる。彼女はボールを的に当てて点数を競う遊戯をしていたらしく、高得点者しかもらえないという景品を自慢げに見せてきた。どこかの国の民族衣装らしい。学生が型紙を引き、縫製したとのことだ。
そこまで話すと、彼女は急に何かを思い出したかのように手をポンと叩く。
「そうそう、向こうでデザート売ってたんだよ。一緒に食べに行かない?」
「へぇぇ。どんなのですか?」
「なんか柔らかいパンみたいなのに、上からクリームチーズをたっぷりかけた奴」
そんなの不味いわけないじゃないか。どう考えても美味しい組み合わせだよ。
「行きましょ行きましょ。それ食べたいです」
「よし、それじゃ行こうか」
ブレッドさんに手を掴まれ、彼女の案内を元に名前も知らないデザートを食べに行く。人の多い中、二人で道を走る時間はとても長く感じ、なんだかとても…。
「ブレッドさん!」
「なにー?」
「今、楽しいです!」
とても久しぶりにそう感じた。その後に食べたチーズ乗せパンの味は、しばらく忘れることがないだろう。
「…ん」
気がつくと宿屋で眠っていた。あの後は確か他の食べ物の露店を渡って、ブレッドさんがやったというボール投げをやったりして。…全然上手くいかなくて参加賞の飴を貰ったりしたなぁ。
そうして夜まで遊んで疲れ果て、宿屋に戻った瞬間にすぐ寝てしまったようだ。太陽が昇り切っているのを見るともう昼頃か。随分と長い間眠っていたようだ。
シャワーを浴びて朝食兼昼食を食べながら、外の様子を見る。祭りは今日も行われているようで、すでにたくさんの人が外を歩いていた。
あの人たちも昨日の私と同じように、今日の出来事を思い出に残すんだろうな。そう思いながら、私はチーズのかかってない固いパンを頬張った。




