発想を買うのも、また一つの思い出
会場の賑わいは街に入った時のそれ以上となっていた。至る所に灯りのような装飾が施されており、その下にはメインである学生が店を開き、それを多種多様な人たちが見回っている。
あるところでは薬草を使った薬の販売、またあるところでは遠い地方の置物が売られており、更には魔法を使った見せ物なども行われていた。
皆が楽しそうだ。こんな光景を見せられると、こっちも心が躍る。
「ブレッドさん、ブレッドさん!後で合流しましょう!私は一通り見て回ります!」
「ん、わかった。楽しんでおいで」
彼女は子を見る母の目をしていたが、それを指摘するのも嫌になるくらいに、この時の私はワクワクしていた。何せこの世界に来て初めての催し物だ。それもこんなに盛況なものを見せられたら、童心に返るのも仕方のないことだろう。
あぁ、本当に返れたらいいのに。
「そこのお嬢ちゃん!良かったらこれ、見ていかないか?」
そうして見て回っている中で、とある学生から声をかけられた。前の街では子供におばさんと言われたが、今は学生に歳下に見られているのか。…私の外見って、自分のことながらよくわからない。
手招きされるがまま露店に駆け寄り、品物を眺めてみる。そこには木を削って作られた置物が手頃な値段で売られていた。置物は動物や武器、建物などをモチーフに様々な種類がある。
「これは全部、オレが作ったんだ。荒いところもあるだろうが、気に入ったものがあれば手にとって見てくれよ!」
元気のいい学生がそう言ってくれたので、言われた通りにいくつかの品物を手にしてみる。専門的なことはわからないが、一見して何の動物か、何がモチーフなのかがわかるということは良い出来なのではないだろうか。
と、一つ気になるものがあった。これだけ何がモチーフなのかはわからない。翼に包まれた、丸い何か?
「これは?」
「おぉっ、お嬢ちゃん見る目あるねぇ。それはオレの最新作で、あるテーマに則って作ったモノなんだ」
「テーマぁ?」
何だろう、哲学的な何かだろうか。色々な角度から覗き込んでみるが、私には正解がまるでわからなかった。やがて私はその品物を置き、両手を上げて降参の意を示す。
「はっはっは。これはな、誕生をテーマにしたモノなんだ」
「誕生?」
「翼に包まれた卵。この世に生まれて親に抱かれた様子を表してみたんだ。どうだ?」
どうと言われても。言われてみたら翼に包まれた卵だということはわかるが、それがそのテーマに合ってるかどうかというのは人によるのではないだろうか。まぁ、発想は面白いと思うし、実際にそれを作ることができるのは凄いけれども。
「これも売り物なんですよね?」
「あぁ、オレの手元には似たようなものがいくつもあるからな」
「ならこれ、買います。いくらでしたっけ」
こういう自分にはない発想を買うのも、また一つの思い出だろうな。私はそう思い銅貨を支払った。せっかくだ、今後泊まる宿屋に飾りでもしよう。




