私はお姉さんです
日中。
夜に教会に忍び込むとブレッドさんに伝えた私は、教会へこっそり忍び込める場所があるかを確認していた。別に強行突破をしてもいいし当初はそのつもりだったのだが、無駄な破損は控えるに越したことはないだろう。
教会の横をぐるりと一周。どこかにわかりやすい侵入口はないだろうか…。
「…あ」
粗探しのように見ていくと、二階の窓が空いていることに気がついた。今のうちに小さなストッパーでも挟んでおけば、もしかして夜にあそこから侵入できるかもしれない。
周りの様子を見て誰の視線もないことを確認。そして風の魔法を使って空を飛び、小さな氷を作って窓に設置した。
「わっ」
「!?」
僅か一分以内にそれらを済ませ着地した時、背後から子供の声が聞こえた。おかしい、確かに周りは確かめたはずなのに、一体どこから?いつから?
いや、それよりもこの完全に犯罪行為を見られたこと自体が問題だ。場合によっては子供相手だろうと口封じをしなければならない。子供に罪はないが、目的のためには非情に徹しなくては──!
「おばさん、凄いね。魔法使い?」
よし、口封じすべし。慈悲はない。
「怖い顔しないでよおばさん。大きな声出しちゃうよ?」
「ほう、脅迫のつもりですか。何が要求ですか?あと私はお姉さんです」
目の前にいる男の子は私のことを鼻で笑ったあと、自らの要求を口にした。
「お母さんを正気に戻してほしいんだ」
そう話す彼の顔は先ほどまでの生意気な表情とは異なり、年相応の子供らしいものだった。
「お母さんが、さ。最近変なんだよ。些細なことで悩んで、お金持ってあの教会に行くんだ。それで帰ってきた時は気持ち悪いくらい笑顔なんだけど、寝て起きたらまた怯えた顔をするんだ」
それは恐らく、あの教会のせいだろう。教会の人間、主に神父が村人たちに向かって何か暗示や催眠のようなことをして、人々の気持ちを操っているんだ。多分。
それはこの生意気な子もわかっているみたいで、だからこそ教会に仕掛けをする私に対してこんな話を持ちかけたのだろう。
「これって教会があんなに大きくなってからなんだ。大きくなってから、お母さん以外の大人も、あの教会に通い詰めている。変なんだよ、あそこ」
「わかってますよ。この村にやってきて一日しか経っていませんが、あそこに集まる大人たちが異常だってことは感じ取れます」
そして、私の仲間もそれに流されそうになっていることも。
「まぁ、その要求は受けましょう。はなからそのつもりでしたから」
「本当?」
私が答えると、男の子は花が咲いたように嬉しそうな笑顔を私に見せ、そのまま手を握ってきた。
「ありがとう、おばさん!他の大人たちは教会に対して悪い感情はないんだ、誰にも頼れなかったんだよー!」
「…いいですけど、私はお姉さんです。十八ですよ、私の歳」
「十分おばさんだよ。何だか生き疲れてた顔してるもん」
その後、私は夜になるまでこの男の子に女性の扱い方というものを教え続けることとなった。




