話があるんですが
恐らく私の直感は間違ってはいないだろう。あの教会には何かがあり、目的はわからないが神父はそれを悪用している。
それを知るためには誰も来ない時にあそこへ忍び込む必要があるだろう。やるとしたら早めの方がいい、今夜とか。
ブレッドさんはどうしようか。彼女は外部の人間だし、事情を話せば人を不安にさせる謎の力も弱まるんじゃ無いだろうか。
「シロカァ。何だかアタシ、今凄くやる気が湧かないというか、怖いんだよねぇ…」
そう思いつつ宿屋に戻ると、ブレッドさんはアンニュイな表情を浮かべて窓から景色を眺めていた。まだ日中なので窓からは日が差し込んでおり、真空色の髪が輝いている。まるで絵画のようだ。
「この村には悩み相談できる教会があるっていうし、そこに行ってみようかなぁ」
「そのことで話に来たんですけど、その教会って多分インチキですよ」
「インチキぃ!?」
彼女は大きな声を出して私の肩を掴み、ガクガクと揺らした。元気になったのかと思いきや、次の瞬間にはわかりやすいくらい落ち込んで地面に「の」の字を書いている。
「そうかぁ、インチキかぁ。この世に信頼できるものってないんだね。信頼できるとしたらお金だけかぁ」
「お金は自分を裏切りませんが、お金でできた人との関係はすぐに崩れますよ。そんなことよりも話があるんですが」
若干放心状態なブレッドさんの手を握り、無理やりにでも意識をこっちに向けさせる。
「その教会の不正を暴こうと思いまして。協力者が多いに越したことはありませんので、手伝ってくれませんか?」
「手伝うのはいいんだけど。アタシなんかがシロカの役にたてるのかな、ふへっ」
自嘲気味な表情を浮かべて変な笑い声を出した。完全にキャラが違う。何だかやりにくいなぁ。
「今夜、例の教会に忍び込むつもりです。よろしくお願いしますね」
「うん、うん。わかってるよ。できるとこまでやるからさ」
「……」
これは。
誘っておいて悪いのだが置いていった方が良かったかもしれない。彼女は完全にあの神父、いや教会の力の影響を受けている。不安な感情というのだろうか、その気持ちが増幅されており、普段の思考と同じとは言いにくい。悪いことをしたな。
それにしても、不安な感情を増幅させる能力か。とても恐ろしいものだ。その感情を持っている人間は、世界のどこに行っても存在するだろう。
私以外は、だが。




