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異世界勇者の人助け  作者: 鳥羽こたつ
2章
30/125

皆さんもお元気で

天気は快晴、雲一つない空が広がっている。輝く太陽は、旅立つ私たちを祝福してくれているようだった。


「準備はできた?」


手を額に当てながら太陽を見ていると、背中からブレッドさんの声が聞こえてくる。振り返ると、私とは対照的に身軽そうな格好をした少女がそこにいた。


「えぇ。着替えと保存食と毛布だけ背中のリュックサックに詰め込みました」


昨日あいてむぼっくすという別空間に物を転移させるシステムについての使い方を学んだが、結局私は自分からすてーたすうぃんどうを開くことができなかったため、自分の荷物だけは背負っていくことにしたのだった。


「なんならそれも預かるのに」

「荷物を預けて、万が一離れ離れになったら大変でしょう」

「それもそっか」


そのせいで歩くのが少し遅くなってしまうが仕方がない。ブレッドさんもそのことについては納得してくれている。背負った荷物の重さを感じながら街から出ようとすると、そこにはハング・アーとその仲間達が集まっていた。


「よう女神様。待ってたぜ」

「はぁ。何の御用です」

「餞別をくれてやろうと思ってな」

「昨日ブレッドさんに渡したのでは?」

「それとは別にだ。やはりこういうのは直接渡してこそだと思ってな」


彼は少し勿体つけたように懐から小さな包みを取り出すと、それを私の前に差し出した。


「治癒魔法の効果が縫い込まれたハンカチだ。傷ついた箇所に巻くといい」


なるほど、包帯みたいなものか。これは良い物を頂いた。後々の旅路で役に立つだろう。


「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」

「あ、あぁ。それにだな。メッセージカードも入れさせてもらった。後で確認して欲しい」

「言いたいことがあるなら今伺いますよ?次にいつ会えるかなんてわからないですし」

「ば、バカ!そんなの恥ずかしいだろ!」

「どんなことを書いたんですか…」


恐怖のあまり人に抱きついてきたり、幼児退行したり、告白したり。もう散々恥ずかしい姿を見せてると思うんだけどな。そう思っていたのが顔に出ていたのか、ハングの仲間がフォローを入れるように耳元で呟く。


「あいつ、シャイなところがあるんだよ。察してくれ」

「はぁ。わかりました」


最初に出会った時の態度のデカさはどこへ行ったのやら。それともあの時が特別だったのだろうか。疑問に思ったが声には出さず、私は包みがつぶれないように、着替えにくるんでリュックの中に詰め込んだ。


「それでは私たちは行きますので」

「あぁ、元気でな。モンスターには気をつけるんだぞ。風邪引くなよ。詐欺や偽造品には注意しろよ」

「わかってます。皆さんもお元気で」


街を出て街道を歩く。土地勘のない私に代わって、ブレッドさんが地図を持ち先行している。行き先は決まっていると聞いていたので安心だ。

最後に後ろを振り返ると、その姿が見えなくなるまでハングさんは手を振っていた。

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