ドン引きするレベルだ
ゴールデンウィークが始まりました。なんだかんだ言っても連休は嬉しいかなと思います。
視線の数は恐らく一つだけ。敵の数もそう仮定して良いだろう。利き手に握ったシルシを二度振り、軽く準備運動。逆の手に生み出した火球を掲げ、相手の出方を見る。
足音が近づいてきた、人のそれに似ている。となれば相手は人型か。
暗闇からヌッと人影が現れた。もちろんそれは普通の人間ではない。白骨死体、スケルトン。人間の残り滓とでも言ったところか。
白骨死体は頭蓋骨をカタカタと揺らす。まるで笑っているようだ。挑発か、自信があるのか、それともただの挨拶か。そして挨拶を終えると、白骨死体は右手のカトラスを構えて私へと飛びかかってきた。
「死者が生者に迷惑をかけるなんて!」
その攻撃をシルシで受け止め、もう片方の手で灯りがわりにしていた火球をスケルトンにぶつけた。一瞬で辺りが黒く染まり、背後から「ひっ」と泣き声が聞こえた。不安にさせた分、すぐに戦いは終わらせてみせる。
遠くでカタカタと何かが揺れる音がした。先ほどと同じ白骨死体の挨拶、いや挑発か。はっきりと、場所がわかるくらいに、骨が揺れている。
「調子に乗ったなぁ!」
敵がいる方向がわかれば話は早い。その方角へ向かって、大きな炎の塊を放った。炎によって一瞬だけ照らされた視界は、白骨が灰塵と化す瞬間をしっかりと捉えた。
終わった。以前の狼戦とは違い予め思考を整理しておいたおかげか、あまり疲れていない。再び小さな灯りを手のひらに灯し、もう片方の手でハングさんの腕を掴んだ。
「ほら、帰りますよ。…何でそんなに泣いてるんです」
先日の決闘の無駄な自信過剰はどこへ行ったのやら。ハングさんは子供のように泣きじゃくっていた。ドン引きするレベルだ。
「だ、だって。急に暗くなったから、灯りがなくなったから、死んじゃったのかと思ってぇ」
「幼児退行でも起こしたんですか。死にませんよ、やりたいこととかありますし」
やらなければならないことも。
「や、やりたいことって?オ、オレで良ければ、力になるぞ。いやならせてくれ!」
「その心だけ貰います。貴方には無理ですよ。そもそも、…いや、何でもないです」
それからはハングさんが泣き止むのを待ち、二人で洞窟を進んでいく。時々振り返ると、彼はその度に顔を真っ赤にして俯いた。まぁ、あれだけ恥ずかしいところを見せたのだ。茹でダコみたいに真っ赤になっても仕方がないだろう。
やがて洞窟から出ると、夕焼けが私たちを出迎えてくれた。思ったよりも長い間篭っていたみたいだ。ハングさんの仲間も心配しているだろうし、私たちは急いでギルドへと戻ることとした。




