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異世界勇者の人助け  作者: 鳥羽こたつ
2章
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私が、もっと凄かったら

ハング・アーは私たちを決闘に呼び出して、そのまま行方知らずになった。それが私の知っている情報だ。…つまり、探し出す為の条件は無いに等しい。しらみつぶしに探すしかないだろう。こういう時は勇者だなんだと言っても、自分が万能ではない事を思い知らされて何だか嫌になる。


「私が、もっと凄かったら」


そうすれば、守れるものも多かったというのに。

…今はそんな事を嘆いている場合ではない。マイナススパイラルに入る前に思考を打ち切り、私は再び足を進めた。

平原にたどり着いた私は辺りをきょろきょろと見渡した。周りには見渡す限りの草原が広がっている。平原なのだから当たり前なのだが。

何か、手がかりは?足跡とか、落とし物とか。小さな事でいい、形跡が欲しい。ゆっくりと、だが素早く周りを見て回る。見落としはないだろうか。


「ん」


そうして森の方まで歩き、とある木を見て気がつく。ここにある数本だけ幹の表面が傷ついていた。自然にできたものとは思いがたいような刃の跡。鋭い一閃の痕跡。

鎗の攻撃か。

そうなると、ここで彼が何かと戦っていた…。そう考えて良いだろうか。そう思って辺りを見渡すと、背の高い草を無理やり突っ切ったかのように、一箇所だけ不自然に倒れた茂みがあった。

茂みの中を進む。視界は草で覆われており、方向感覚を失ってしまいそうだ。ミイラ取りがミイラにならないと良いのだが。


「っと」


やがて茂みを抜け、洞穴が目の前に現れた。暗闇が遠くまで続いている。以前やったように手のひらに小さな火球を作り、それを頼りに進んでいく。


「ハングさーん!いますかぁー?」


聞こえるのは自分の声だけ。今のところは。

分かれ道に印をつけ、大きな声を出しながら進んでいく。数分歩き、一休みをし始めた頃。自分以外の声が聞こえた。子供のようにすすり泣く声が。


「ハングさーん?」

「う、うぅ…!」


声の方へと駆けつけると、そこには良い大人が体育座りで膝に顔を埋めていた。後ろ姿でわかる。吹き出物男だ。

何度か呼びかけてようやく私に気がついたハングさんは、涙と鼻水でぐちゃぐちゃに汚した顔を私の体に押し付けてきた。やめて欲しい。


「う、あぁぁ!怖かった、怖かったんだよぉ!」

「わかりましたから離れてください。私は貴方の母親ではありませんし、そうなるつもりもありません」

「暗くて、腹も減って、死ぬと思ったよぉ!あぁぁぁ!」

「わかりましたから、早く帰りますよ。ほら立って…」


そう言ってハングさんの腕を掴んだ時だった。背後から突き刺すような視線を感じる。人のものではない。獲物を見つけたという、動物の目。

後ろを見る。そこにいるのは震える男。戦力としては期待できないな。


「動かないで、そこにいてください」

「え」

「戦闘が始まります。大丈夫、貴方は私が必ず守ります」


そう声をかけて愛剣(シルシ)を構える。視界があまり良くない。大技でもいい、早めに戦闘を終わらせる必要がありそうだ。

4月も終わってしまいましたね…。

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