手紙を貰いました
カレーに昆布出汁とバターと料理酒を混ぜたらめちゃくちゃ美味しく出来上がって驚きました。
太陽が隠れた夕方に、私たちは昨日と同じ平野にやってきた。理由はもちろん、例の吹き出物男との決闘に挑むためだ。挑むのは私ではなくブレッドさんだけだが。
しかし果たし状に書かれた時間丁度にやってきたというのに、肝心の対戦相手がどこにもいない。見える光景といえば、オレンジ色の空とどこまでも広がるような大地だけだ。
「何、もしかしてただの嫌がらせ?」
呆れたように大きく息を吐くブレッドさん。確かに呼び出されたからわざわざここまで時間を割いてやってきたのに、その仕打ちがこんなことであればため息の一つや二つは吐きたくなるだろう。だが、私は彼が騙したとは思えない。…根拠はフィーリングだが。
ブレッドさんとともに果たし状の内容を確かめ、すてーたすうぃんどうの時刻と照らし合わせる。やはり間違いはない。場所も今いる所で合っている。
「もう少しだけ待ってみませんか。何か遅れる理由があったのかも」
「遅れる理由って?」
「お腹痛い、とか?」
「体調整えてから決闘を挑みなさいよ…」
昨日は元気そうだったのだから、よく考えればその可能性は低いか。
ブレッドさんを宥めつつ、男がやってくるのを待つ。五分、十分、三十分…。
結局その日、男は私たちの前に現れなかった。お陰でブレッドさんは、湯気が出るくらいプンスカ怒っていた。
翌日。
道具を買う資金調達のためギルドにやってくると、遠くの休憩スペースの方が騒がしくなっていた。その中心にいた小太りの男が私たちを見つけると、眉間にシワを寄せて走ってきた。そして私の胸ぐらをぐいと掴む。
「おいオールX!お前ハングに何をした!」
何だ、誰だそれは。
「とぼけた顔をしやがって!昨日ハングがお前たちと会ったのは知っているんだぞ!」
「待ってください。ハングって誰ですか?」
「ハング・アーのことだ!一昨日貴様に敗れた男だ!」
あぁ、あの吹き出物男のことか。名前を聞いていなかったからさっぱりわからなかった。
「確かに会いましたけど。手紙を貰いました」
「そうじゃない、その後の話だ!人でなし女と決闘すると言って、奴はまだ帰ってこないんだぞ!」
ドクンと心臓が鳴る。帰ってこない?そうか、だから昨日は奴が現れなかったのか。
もしかして、途中でモンスターに襲われたとか。以前私たちがモンスターの討伐に行ったら想定外に強い個体と戦う羽目になったように、強いモンスターと戦って瀕死になっててもおかしくない。
「あの、ハングって方はどこに向かうと言ってたんですか?」
「だから、お前たちと決闘に…」
「決闘の場に彼は来ませんでした」
言葉と表情で私の考えていることを察したのか、男の顔から血の気が引いていく。
「…場所までは聞いてない。お前たちに勝ってくると言って、奴は昼頃に宿屋を出たんだ」
「昼。決闘は夕方ですから、ずいぶん早く街を出たんですね」
恐らく体を温めるためのウォーミングアップも兼ねていたのだろう。それのせいで決闘の場に来られないほどの傷を負ってしまった、そんな所だろうか。
「行きましょう。ブレッドさん」
「行くって、どこに」
「決まってるでしょう。ハングを探しに行くんです」
答えは聞かずに、私は街を飛び出した。




