中身は果たし状か、それとも
ランニングを始めました。
「…そんなに見られても困りますが」
吹き出物男との戦いを終えた翌朝の話だ。宿屋を出た私はその吹き出物男に出会い、今現在に至るまで何故か着いてこられている。
男に奉仕するという約束はなくなったものの、不幸なことに私たち、いや私は奴に目をつけられてしまったようだ。
「ふん、オレは恥をかいたんだぞ。お前のせいでオールXにも勝てない雑魚という烙印を押されてしまったんだ!」
「え、どうしてそんなことになってるんです。私、昨日のこと誰にも話してませんよ」
「オレが仲間達に問われたからだ。仕方なく話してしまったんだよ!」
自業自得じゃないか。怒られても困る。
一つ大きなため息を吐くと、男は何かに気がついたように目を開いた。
「…待て。あの人でなしはどこだ」
「ブレッドさんのことですか?」
人でなしって、酷い言われようだな。それでわかってしまった私も私だが。恐らく体の特徴を弄られたことを気にしているのだろうか。
「彼女なら今日は別行動ですよ。街を出るときのために色々用意してくれるらしいです」
「そうか。残念だ」
「残念とは」
「奴と話したいことがあったんだ」
「デートの誘いですか?女性にも相手を選ぶ権利があるということを理解してます?」
「喧しい!」
顔を真っ赤にして男は言った。しかし、怒ったというより恥ずかしいといった様子だ。昨日はいきなりからかわれたので最悪の印象だったが、意外と紳士的な奴なのかもしれない。…いや、紳士的な男はいきなり人を馬鹿にしないし、宿屋の前で待ち伏せなんてしないか。
「言伝なら預かりますが」
「結構だ」
「そうですか。では、日を改めてまた来てくだ」
「手紙を用意したからな」
…もしかして、最初から直接話すつもりなど微塵もなかったのだろうか。
男から手紙を渡すように告げられると、彼はそのままどこかへ行ってしまった。受け取った封筒を見渡す。飾りっ気のない白い封筒だ。太陽に当ててみるが、中身は見えそうにない。中身は果たし状か、それとも。
「…果たし状かぁ」
何だ、ラブレターではなかったか。
適当に街を歩き回った私は、その途中で買い物中のブレッドさんに出会った。先ほどの出来事を話して手紙を渡すと、彼女はビリビリと破くように雑な封の開け方をする。そして中身には…相変わらず文字は読めないが、カクカクした大きな文字が書かれていた。
「他に何か書いてないんですか?」
「場所と日時と恨み言かな。うわ、吹き出物について書かれてる」
やはりコンプレックスだったのか、あの顔。
しかし今度はブレッドさんが戦うのか。…そういえば、彼女が戦ってるところはあまりじっくり見たことがないかもしれない。最初に会った洞窟でチラチラと見たくらいか。
これは丁度いい勉強になるかもしれない。受ける気満々なブレッドさんを見ながら、私はそう思っていた。




