地面にキスをしていた
前回無意識で前書き書いてなかった…
ブレッドさんが放った開戦の掛け声と共に吹き出物男が走り出す。それはまるで獣のように素早く。だが、一直線に。
安易な軌道の攻撃であれば避けるのは容易い。私は特に慌てる様子も見せずに、体を捻ってその一撃を回避した。
「何っ!?」
そんなに驚かれても困る。私は当たり前のことをやっただけなのだから。
「貴様、どうやってオレの一撃を!?」
「見てたでしょう。特に変わったことはしてませんよ」
「ふざけろ!そんなことができるわけがないだろう!」
何故そんなに自信があるのかはわからないが、本当に特別なことはしていない。男は自分の敗因を理解していないのか、もう一度同じく一直線に突進を行った。勿論その攻撃も難なく避ける。突進、避け、突進、避け…。
単調な攻防に、先に音を上げたのは吹き出物男だった。
「いい加減に当たれよ!クソがぁっ!」
裏返る声は、まるで弱音のように聞こえた。声とは異なり、最初に繰り出した攻撃と比べて精度も速度も悪い。
何度目かわからないその突進をギリギリまで避けずに引きつける。吹き出物男の表情が明るくなった。やっと攻撃が当たる、そう思っているのだろう。
「…えっ?」
次の瞬間、男は地面にキスをしていた。…というのは言い方が気持ち悪かったか。
男の攻撃が当たるその瞬間に足払いを仕掛けた。焦りや油断から、男は受け身も取れずに顔面を地面に叩きつけてしまう。
「二発目、三発目。はい、これで私の勝ちですかね」
足払いを一発とカウントして、倒れた男の背中をバシバシと叩く。三発の攻撃は武器で行えとは言われていない。人が傷付かずに済むのならそれに越したことはない。顔面から転んだのは危険なことではあるが。
「な、ちょ、え?」
「ブレッドさん、判定は?」
「ん、あぁ。シロカの勝ちだね」
「すっごく適当な返答ですね」
「もっとボコボコにするのかと思ってたから。なんだ、こんな攻撃で終わらせるのかって」
「お、おい!雑談を進めるな!」
気がつくと男は立ち上がって鼻を押さえていた。よく見ると地面にポタポタと赤いシミができている。
「大丈夫ですか?そういう時は確か、上を向いて鼻を摘むのがいいらしいですよ」
「あれ?そんな民間療法あったっけ?」
「馬鹿共がっ。そんなことをしたら血が逆流して危ない、って違うそうじゃない!」
流れるようなノリツッコミをすると、吹き出物男は下を向きながら話を続ける。
「あんなもの認めるか!そもそも攻撃に回るのがオレだけだったのが良くない。防御に回った方が回避するだけだから楽だろうが!」
「貴方の攻撃が単調だったのが原因でしょう。もう少し速かったり、技の振りが読みにくければ、話が変わってくると思いますが」
「黙れ!ともかくもう一回だ!今度はお前から仕掛けるんだぞ、わかったな!」
そう言って鼻血を出す男と二回戦を始める。無論、私が勝ち、再び「認めない」と言われたのは言うまでもない。
結局私たちは日が暮れるまで、男の戦いに付き合うこととなった。




