聞いてくれないんですね。私の話
こう何もしてないと前書きのネタもないですね。
「おい、待てよコラッ!」
ぎるどを出た私とブレッドさんを、例の吹き出物男が追いかけてくる。随分としつこい男だ、ついついため息が漏れてしまう。
「何です?私の実力は貴方より下なんですよ。そんな格下に構っているのは時間の無駄なんじゃないですか」
「黙れよ!お前のそういう飄々とした態度が気に食わないってんだ!」
この方、私が何やっても気に食わないのでは。
「ご安心ください。私達は数日でこの街から立ち去るつもりですから。目障りな虫はすぐに消えますよ」
「そんなこと知るかよ。格下は格下らしく隅に閉じこもっておけばいいのに、出しゃばりやがって!」
…あながち、何をやっても気に食わないというのは間違ってなさそうだ。恐らく私の存在自体が気に食わないのだろう。こういう時は下手なことを言わずに、ペコペコ頭を下げるに限る。
「それは、すみません」
「それで謝ったつもりかよ。誠意を見せろや、誠意を!」
「土下座でもしましょうか」
「そんなんで満足できるかよ」
「…具体的に何を?」
「オレに尽くせ」
そう言って男は吹き出物だらけの顔を私に近づけ、先ほどしたように肩へ手を伸ばす。心なしか、呼吸が荒いように思えた。
「心配するな、悪いようにはしない。飯だけ作ってくれよ、な?」
こいつ、きっとそのうち色々な条件を足してくるな。なんとなくわかる。そのうち一緒にご飯を食べろだとかお風呂だとか寝ろだとか言ってきそうだ。
さて、どう切り抜けたものか。
「ちょっとあんた。こっちが黙ってれば調子に乗って!」
しまった、考えているうちにまたブレッドさんが燃え上がっている。再燃した炎は消すのがしんどいぞ。
「大体何であんたの言うことなんて聞く必要あるの?」
「はぁ?さっき言っただろうが!格下は黙ってオレの言うこと聞けばいいんだよ!」
「だから、それが間違いだっての!シロカがあんたより弱いわけないでしょ!」
…あぁ、この流れは。
「ふざけろや!こいつは自分で認めたんだぞ、Cランクの模擬戦に勝てたのは偶々だって!」
「そんなの信じてるなんて脳みそお花畑なんじゃないの?」
「クソ女がぬかすなっ!ならここで見せてみろよ。オレ以上の実力を!」
わぁぁ。やはりそうなってしまったか。
「いや、特段必須でもないのに人に刃を向けたくはないのですが」
「いいでしょう!受けて立つよ、シロカ!」
「聞いてくれないんですね。私の話」
それが手っ取り早い方法だということはわかっていたが、気が進まないので言わなかったのに。しかしここで受けて立たないと、話が長引きそうなのも事実だ。
仕方がない。ここはさっさと終わらせよう。私にはそれができるから。




