生活もままならないぞ
今度は間違っていませんように…
「レオフェイク・ウルフ二頭の討伐をした、ですって…?」
ボロボロになった私たちは昨日と同じ宿屋で一泊した後、ぎるどに依頼達成の報告へ行った。どうやらすてーたすうぃんどうには魔物の討伐履歴がカウントされているらしく、インフォメーションのお姉さんは私のうぃんどうを見て驚愕の表情を浮かべていた。
「オールXが、ランクBクラスのモンスターを倒した…?」
「ボロボロでしたけどね」
「勝ったのは事実でしょ、誇りなって」
ブレッドさんにそう言われて肩を叩かれるが、あまり勝ったという自覚がない。あの狼とは、互いに一発ずつの攻撃で勝負がついたというか、たまたま私の攻撃が当たっただけで試合に勝ったけど勝負はついていないというか…。
そんな私の思いをよそに、周りはザワザワと騒がしくなっていく。どうやら私のことが悪い意味で噂になっていたらしく、ガラの悪い男達が私に視線を向けてくる。
「よぅ!あんたが例の女神様だってのか?」
そんな中、一人の男が私に声をかけてきた。ツンツンと重力に逆らった髪型、そして複数の吹き出物が目立ったその顔は、お世辞にも整った容姿とは言えない。男はその吹き出物だらけの顔をグニャリと歪めて笑い、馴れ馴れしく私の肩に手を添えてくる。
「しっかし凄いよなぁ、女神様は。こんなに貧弱なステータスでランクC、そしてオレでも倒したことのないレオフェイク・ウルフまで倒しちまうんだもんなぁ」
「回りくどい言い方をする男性はモテませんよ」
「はっ。なら直接聞いてやるよ。お前、いくらあいつに払った?」
あいつ、というのは試験官の男のことだろう。この吹き出物男は、私が八百長で試験に勝ったと思っているのだ。
「そんなお金はありませんが」
「おいおいおい、しらばっくれるなよ。そうでもなきゃ、その貧弱なステータスでどうやってあいつに勝つってんだ」
「あのさ、何なのあんた。どうしてそこまでしてシロカに絡むのさ」
「連れは黙ってろや。気に食わないんだよ!レベル15でステータス平均が1200のオレより、こんな小さなガキのランクが上だってことがなぁっ!」
…あーぁ。またよくわからない指標が出てきた。すてーたすの平均?れべるが15?この世界に来てから色々な単語が出てきたが、理解する前に次の言葉が出てくるからまるで覚えられない。
ともかく、吹き出物の言葉を聞き続けてみると、どうやらすてーたすの値が低いのに自分より成果を出している私が許せないとのことだった。つまりは、僻みという奴だ。
適当に聞き流そうとする私の横で、何故だかブレッドさんがヒートアップして吹き出物と言い争っていた。
「あんたのレベルがいくつだって知らないけど、シロカは結果を出してるの。ステータスは嘘をつかないし、何人もの人の前で試験官を倒したの。それが八百長だって?バカ言わないでよ」
「それがおかしいっつってんだよ!オールXなんて防御の数値が100あったらHPを1も削れなくなるんだぞ?ならどうやって勝つってんだ、不正しかないだろうが!」
防御の数値ってなんだ。攻撃を避ける反射神経の凄さだろうか。
「それは!…説明できないけど。でもシロカは不正なんてしてない!」
「なら証拠を見せてみろよ!不正をしてないという証拠を!」
「じゃああんたこそ!不正をしたっていう証拠を見せなさいよ!」
「あの、お客様方?他の方のご迷惑になりますので、その辺にしてくださいませんか?」
先ほどまで驚愕の表情を見せていたお姉さんは、今は困惑と怒りの表情を浮かべている。このまま騒ぎを続ければ出禁になってしまうかもしれない。それは困る。ここはせっかく見つけた稼ぎ場所なんだから。
「はいはいはい、わかりましたわかりました。あなた方のご想像にお任せしますので」
段々と燃え上がる二人の炎を鎮火させるように、できるだけ静かに語りかける。
「ブレッドさんの言うように私は結果を残している。でも吹き出物のあなたが言うようにそんなことできるわけない。たまたま上手くいっただけなんですよ。そういうことにしておいてください」
「吹き出物…?」
肝心の吹き出物男はが頭の上に疑問符を浮かべていたが、今ここに長居をしたらろくでもないことになりそうだ。ここは一旦、撤退しよう。
「お姉さん。報酬金だけいただければ立ち去りますから」
「ちょっとシロカ。勝手に決めないでよ。アタシはまだ納得してない…」
「納得するのに時間がかかりそうなので、今はクールダウンするべきです」
インフォメーションのお姉さんからお金を受け取った私は、ブレッドさんの手を引っ張り外へと連れて行く。全く不便な世界だ。すてーたす至上主義の世界かどうかはわからないが、モンスターを倒して疑われるなら生活もままならないぞ。




