勝ってきます、あいつに
予想以上に激しいですねウィルス
ざわつく胸元に追い討ちをかけるように、茂みの中からギラリとした視線を感じた。獲物を狙う捕食者の目、絶対に逃しはしないという強者の目。そして、仲間を傷つけたことを許さないという復讐者の目。
先ほどの群れの長が出てきたってところか。体を貫くような視線を受けながら、こちらも睨み返すように視線の主へ目を向ける。
どうする、先に仕掛けるか。いや、相手の実力もわからないのに戦うのは危険か。…まずい、考えがまとまらない。こんなことで取り乱してどうする──。
落ち着け、シロカ。生き残ることだけを考えろ。
「あの、シロカ」
「不用意に動かないで。傷つきますよ」
ブレッドさんを守りながら戦うとなると、できるだけ私の背後にいてもらい、ぴったりくっついてもらうのが良いだろうか。彼女が戦っているところは街での女神騒ぎの時しかないが、背中を任せることくらいはできるだろう。もちろん、相手の力量によっては私一人で戦うことを優先して彼女には隠れてもらうが…。
「っ」
視線の鋭さが強くなった。ブレッドさんとのやり取りを見て隙ができたとでも思ったのだろうか。
恐らく、来る。
「ブレッド、私の背中に!」
「え、う、うん!」
私が声を張るのと同時に、茂みから大きな狼が現れた。その大きさは獅子の如く、雄々しい姿をしている。
地響きがするほどの大きな咆哮をあげ、狼は私の方へと飛びかかってくる。先ほど焼き尽くしたものと同じ攻撃をするというのだろうか。
「ぐぅぅっ!」
先ほどと同じように剣で攻撃を受け流そうとするが、やはり力が違う。上手くいかない。寧ろ、押し負けて私の体が飛びそうになる。
こいつ、強いぞ。
「それならなぁっ!」
大地の魔法で狼の重力の向きを変更し、無理やり相手を遠くへ引き剥がす。
距離は離れた、このまま逃げるか?…いや、さっきの飛び込かかってくる速さを見るに、すぐに追いつかれてしまうだろう。何度もこの手が通じるかはわからないし、魔法だってタダで使えるわけじゃない。このまま戦いを続行し、終わらせるべきだ。
「ブレッドさん、木の影に隠れてください。物音は立てないように」
「え、でもシロカは」
「勝ってきます、あいつに。そういう依頼だったでしょ」
放っておいて街や依頼のあった農家に被害が出ても困る。再び愛剣を握り直し、先ほどの狼に向かって構え直した。
「絶対ですよ。じっとしてなきゃ死ぬかもしれませんからね」
「わかった、けど」
「わかったなら大丈夫です。その先の言葉は後で聞きますから」
何か言いたそうに私を見つめるブレッドさんを背後にし、先ほどの狼へ向かって走り出した。




