表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界勇者の人助け  作者: 鳥羽こたつ
2章
16/125

理解し合うには徹底的に戦うしかない

来週には年度が変わってるんですね…

狼のようなモンスターの群れが私たちを前にして吠えている。ここは自分たちの縄張りだ、とでも主張するように。

それは正しいのかもしれないが、こちらだって自分たちの縄張りを荒らされているのだ。咎められる筋合いはない。

構えた愛剣(シルシ)をギュッと握り直し、相手の出方を見る。見た目からして素早い動きで敵を翻弄する、そんなことをしそうに思えるが。そうやってジッと相手を見て待つこと数分。吠え続けていた奴らはそれが無意味だとわかったようで、ようやく鳴くのを止めた。

地面を蹴る音が聞こえたかと思うと、群れの中の一匹が私の目の前まで飛び込んでくる。予想通り、動きが速い。しかし、それだけなら。


「それだけなら、当たらない!」


噛みつこうとする狼の攻撃を握っていた剣で受け流す。そして体を狼から離す際に、もう片方の手から炎の魔法で火球を飛ばした。唐突に放たれたその火の玉に反応が遅れたのか、狼はなす術もなく焼き尽くされた。

しかし、消滅はしていない。まだひっとぽいんとというのが残っているということだろうか。

ひっとぽいんとが命の割合というのならば、奴はまだ生きているのだろう。それならば止めを刺さなくては。そう思った私はゆっくりと歩いて距離を詰めていく。


「ちょちょちょ、何してんの」


そうして歩いているところを、後ろからブレッドさんに肩を掴まれた。振り返ってその顔を見ると、少し青ざめた顔をしているように見えた。


「止めを刺そうかと。そういう依頼ですよね」

「あ、うん。そうだけどさ。ほら、もう瀕死だしさ」

「…あいつはもう見逃せと?」


そう言って黒く焦げた狼を見る。ピクピクと動いているだけで、もう虫の息だ。放っておいても死んでしまうかもしれない。


「でも、奴らはモンスターでしょ。私たちとは違う。放っておいたら回復して、再び襲いかかってくるかもしれない」

「そうかもしれないけど。ほら、残りを見ても、さ」


その光景を見た他の狼達も怯えた様子を見せており、抵抗する気力があるようには見えなかった。人間の力を見て、逆らったらどうなるかと言うことを理解した。という感じだ。


「…」

「ね。いいんじゃないかな。きっともう畑に近づかないって。依頼を完遂したとは言えないけど、これで報告しておこうよ」

「そうとは思えませんが。さっきも言いましたけど、奴らはモンスターですよ。理解し合うには徹底的に戦うしかない」

「だからって殺すことはないんじゃないかなぁ」

「そうしなきゃ何度でも襲いかかってきますよ」

「いや、だから」


声が荒くなっていく。いつまでも平行線のまま話が進まないことに苛立っているんだろう。だが、ここは譲りたくない。モンスターを放っておいて良い結果になるなんて、あるわけがないのだ。


「殺さなくてもいいじゃん。どうしてそんなに殺したがるの?」

「そうしなきゃ何度でも襲いかかってくるってことです。甘やかしちゃいけない」

「甘やかすとかそう言うんじゃ。…ってあれ」


ふと、ブレッドさんが視線を私の背後に向けた。その視線に合わせると、そこにいたはずの狼の群れがいなくなっていた。


「ほら、逃げちゃったし。追いかけるのも」

「…静かに」


聞こえる。先ほどの吠える声と似ていて、それでいて低く、唸るような声が。

面倒なことが起きると、私の胸がざわついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ